「愛国主義」なる中国ヤングらの抗議行動の実態とは?上海と広州ではなぜ起きていないか、背後に権力闘争があるのでは。
19日(土曜)から20日(日曜)にかけて中国の各都市で「愛国主義」とかを標榜する中国人のデモが演出された。日頃、取り締まりの厳しいインターネットや携帯電話での呼びかけもあり、付和雷同の群衆が押しかけて遠巻きに見ていた。
西側でも欧米の数都市で、主として「西側マスコミの中国報道の偏向」に抗議する集会が行われた。「悪いのはダライ一味であり、中国は人権を尊ぶ国家である」そうな。(言論の自由のない国で、よくそんなことを言うよな)と感じた読者が多いだろう。
中国全土には112店舗のフランス系「カルフール」(家福爾)が盛業中である。
品そろえ、店舗内の明るい雰囲気、設計の良さ、などが受けて中国人消費者に人気が高い。イトーヨーカ堂と並ぶほど、買い物客でごった返す。
そのカルフールの幹部がチベット支援に義援金をだした、という噂が流れ、攻撃のターゲットとされた。
もっとも過激な暴力行為、店舗破壊は安徽省の合肥市にあるカルフールで、毎日新聞に依れば「千人が店舗に乱入し」、一部の店舗を破壊した(産経)。
また瀋陽のカルフールでは「六人のデモ隊が、当局に連行された」(毎日)。
NYタイムズは、反仏行動はほかに西安、ハルビン、済南、武漢でもおこなわれ、加えて、小規模な抗議行動は「天津、大連、洛陽、海口」(産経)でも。読売は「広東省深せんでも抗議行動があった」と伝えた。
まとめるとこうである。
合肥のデモが暴力化した(朝日は抗議行動に一万人が参加した、と伝えている)ほかは、穏健な抗議活動で、大連で1000人(読売)、青島も1000人(朝日)。重慶でも不買を呼びかける抗議行動があった(日経)。
▲北京は厳戒態勢ゆえに抗議活動を許さず?
肝心の北京では?
「フランス大使館前に横断幕を掲げた50名」(NYタイムズ)、「車列がクラクションを鳴らしフランス大使館前を通過(日経)。
上海と広州ではおこなわれた形跡が一切ない。
もし「若者の自発的行為」であるとすれば、なぜ限定的な地域でしか抗議が起きていないのか。
当局の背後の操作でもなければ得心できる説明にはならないだろう。
穿った見方をすれば、胡錦濤派の反仏行動の消極的推進に反胡派が過激に応じたか、あるいは無視したか。
地方幹部が江沢民派、太子党、あるいは胡直系かによって、地域的特徴が浮かんでくる。
いずれにしてもデモ隊は巧妙に動員され、プラカード、国旗などが周到に用意され、暴力化しないようにデモの中核を指揮したのは公安系であろう。
05年4月におきた「反日暴動」のように、大使館或いは領事館前に「生卵」や「ペットボトル」の準備はされておらず、またフランス系とはいえ、フランスを象徴するルイビュトンの店舗は一軒も対象になっていないのは奇妙というほかはない。
カルフールは112店舗だが、ルイビュトンはそれ以上あるのに。
NYタイムズは、一部のデモ隊が「マックとケンタッキー・フライド・チキンにも行こう」と呼びかけたという。だが誰も米国系に抗議しに今回は向かっていない。(きっと上からの指示がないからだろう)。
海外ではパリ、ロンドン、ベルリン、そしてロスアンジェルで同様な「愛国主義」の抗議集会が行われ、大量の海外留学生が動員された。(おそらく出欠をとったのではないか)。
パリは共和国広場では参加者が「そろいのTシャツ」、ベルリンのそれは「指示書がまかれ、こまかな注意がなれていた。とくに西側の混入(中国人をよそおい狼藉を働く)に注意せよ」などと書かれていた(毎日)。
つまり、自分たちがデモを演出するときにそうするから、発想が防御的にもなるわけだ。
ロンドンではBBC前にマスクをかぶった中国人が「偏向報道」に抗議した。この演出は沈黙を強いられるという西側左翼運動の真似。
ハリウッドではCNN(キャスターが中国は小悪党と発言)前で抗議集会があった。
しかい親中ラッド政権の豪州などでは「愛国主義」なるもののデモは起きていない。海外でもまた地域限定なのである。さて長野ではどういう中国側の演出があるか?
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