1771 チベット仏教活仏転生管理規則? 伊勢雅臣

チベット仏教の根源を破壊しようとする中国。今回のチベット騒乱のきっかけの一つとなったのが、中国政府が昨年9月1日に導入した「チベット仏教活仏転生管理規則」であろう。
チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ、それに次ぐ地位のパンチェン・ラマは活仏(仏の生まれ変わり)として、死去したのち、そのまま別の人間に生まれ変わると信じられている。後継者は預言や神秘現象などをもとに高僧らが探しだし、特にダライ・ラマとパンチョン・ラマは、相互に後継者を指名し合う仕組みだ。
この後継者を中国共産党政府の許可制にするというのが、この「規則」の狙いである。産経新聞(平成19年8月7日)は次のように報じている。
中国政府は活仏(生き仏)の転生を中央政府の許可制とする「チベット仏教活仏転生管理規則」を9月から導入すると決定した。高齢のダライ・ラマ14世の後継者問題をにらんだ措置とみられるが、宗教の伝統を無視した管理強化にチベット族の不満は高まっており、今月初めには四川省のチベット族自治州でチベット族と公安当局の衝突も発生。ダライ・ラマ14世帰還のめどが立たないなか、現地の混迷は深まっている。・・・
だが宗教の伝統を中国政府の都合のよいように改変するやり方に信仰深いチベット族の不満は高じており、8月1日には四川省の甘孜チベット族自治州理塘県で行われた競馬大会の会場で、チベット族住民100人前後と公安当局が衝突する事件が発生。電話取材に答えた理塘県当局者によると、「チベット族男性が会場の舞台にあがり中国仏教界を攻撃する発言をし、国家の公共安全を脅かした」のがきっかけだという。男性は拘束中だ。
ダライ・ラマ14世は1959年以来、インドに亡命中で、中国政府から「国家分裂活動家」のレッテルを張られ帰国を禁じられているが、チベット族の間では今も「宗教最高指導者」として崇拝されている。
この影響力を断ち切ろうと、中国政府は95年にダライ・ラマがパンチェン・ラマとして指名した当時6歳のゲンドゥン・チューキ・ニマ少年の代わりに、17歳の現パンチェン・ラマ11世(ギャンツ・ノルブ)を選定し、98年から北京で「教育」している。
しかし記者がこのほど、パンチェン・ラマの本拠地チベット自治区シガツェを訪ね、チベット族の農民家庭に飛び込み取材を行ったところ、ほぼ全員が「ニマ少年が本物。今のパンチェンは偽物だから、ダライ・ラマの転生者は探せない」と迷わずに答えていた。現パンチェン・ラマへの不信感があるうえに、反発を招く制度が導入されたことで、現地の宗教的混迷は深まるばかりだ。
チベット仏教徒にとって、最高指導者ダライ・ラマ、パンチョン・ラマへの信は信仰の根源であろう。中国政府が勝手に選んだニセ者を押しつけられては、その信仰の根源が破壊される。
我が国にたとえて言えば、マッカーサーの占領軍司令部が皇室の血統など無視して、勝手に操りやすい人物を指名する、というようなものである。
チベット民族の怒りは、このような深いところから発していると考えられる。
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