1777 腐敗の温床、マカオのカジノ 宮崎正弘

中国共産党の腐敗の温床、マカオのカジノを規制へ。新規カジノホテルは不許可。それでもギャンブラーは押し寄せる。
マカオを過去四十年にわたって牛耳ってきたスタンレー・ホー一族は、例によって「華麗なる一族」にありがちな内紛。妻妾とそれぞれの子供たちがカジノ・ホテルの経営やエンタメ施設、不動産投資のビジネスを巡って「醜聞だらけの一族」となった。
1999年、ポルトガル領土から中国に復帰したマカオには基幹産業でもあるカジノの新設が許可され、スタンレー・ホー一族の「リスボアホテル」の賭場独占ビジネスは終わった。
本場ラスベガスのウィン系とサンズ系、ここの華僑資本のカジノホテルが乱立し、いまや巨大な不夜城だけでも29。
マカオに押し寄せたのは、嘗ては香港ならびに周辺のアジア諸国からの博徒だった。いまは中国大陸から陸続きで、年間1300万人がやってくる。
現場を見ていると、日本の中山競馬場に似ている。
ジャンパーにスポーツシューズ。日本円でせいぜい一万円程度を握りしめ、国境ゲートには、それぞれのホテルが無料の送迎バス。
このイナゴの大群が一攫千金を夢見て、カジノへ「通う」のだ。
ホテルは不夜城、二十四時間営業。地下には特別室が並び、この内の一つが、かの金正日のお坊ちゃま専用。フロアではフィリピンのバンド、ロシアからきた美女らが踊っている。ショーを見ているだけでも時間を忘れる。
虚栄の市。マカオ経済はカジノホテルの乱立で様変わり、2005年に49億ドル、06年52億ドル、07年106億ドル。本場ラスベガスを完全に抜き去った。
▲カジノの博打ホテル規制でも腐敗はおさまらないだろう
22日、マカオ当局は突如「新規カジノホテルを許可しない」と発表した。
全体の三割近いシェアを誇るラスベガス系のカジノ企業を封じ込め、巨大ホテルの開業を控える華僑系の陰謀かとも囁かれたが、「突如の命令は北京から発せられた」(ロイター、23日)。
真因は中国共産党幹部の腐敗防止である。
巨額の賄賂をマカオへ行ってカジノで興じる。スッカラカンになったら海外へ逃亡する。もし儲けると、くすねてきた公金(ばくちの原資)をそっと戻し、儲けを銀行に預ける。こうしてマカオの銀行は、怪しげなマネーのたまり場ともなった。
北朝鮮のマネーロンダリングで制裁を受けた、あのマカオの銀行ナンゾ、氷山の一角にすぎない。
マカオは観光地として最悪、俗化し、腐臭ただよい、犯罪の渦。治安の悪化の源泉が、このカジノに夜者であるとすれば、精神文化、倫理の建前からも、これ以上のカジノ乱立はよくないことに違いないだろう。
だが、「上に政策あれば、下に対策あり」というのがモットーの中国人社会で、新規ホテル規制が施行されれば、既存ホテルの買収と拡張という手がある。それが株式市場に錯乱をもたらしている。
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