<【ワシントン24日共同】米ホワイトハウスは24日、シリアが東部の砂漠地域で昨年9月まで、核兵器原料のプルトニウムを生産できる原子炉をひそかに建設、北朝鮮がこれを支援していたことを確信するとの声明を発表し、この核施設の画像を公表した。米政府が北朝鮮によるシリアへの核協力を明確に認めたのは初めて。
北朝鮮はシリアへの核協力を否定してきた。今回の声明を受けて、なお否定すれば、提出が大幅に遅れている核計画申告をめぐる米朝の対立は深まり、6カ国協議への深刻な打撃となる可能性がある。
問題の核施設は完成間際だったとされ、昨年9月6日にイスラエルが空爆、破壊した。声明は、空爆後、シリアが施設の隠ぺい工作を図ったと指摘。この点を含め「原子炉が民生用ではなかったと信じる十分な理由がある」と述べ、軍事用だったことを示唆した。(共同)>
米政府がシリア東部の核施設と北朝鮮技術者の関与を公式に認め、イスラエルから提供された写真画像まで公表した意味は大きい。これまでも米英のメデイアでは明らかにされながら、イスラエル・米国政府とも沈黙を守ってきている。
それどころか米朝交渉に当たっている六カ国協議の米首席代表・ヒル国務次官補はシンガポールで8日、北朝鮮が求めるテロ支援国家指定解除を、核計画申告の前に行う可能性まで示唆していた。
イラク情勢で手詰まり観があったブッシュ大統領が、北朝鮮の核放棄で点数をあげる外交転換を模索してきたことは間違いない。多少のあいまいな点があっても、ヒル交渉に期待してきた面があったといえる。
だが、今回の米政府の公表はヒル交渉と真っ正面から矛盾する。シリア核施設に北朝鮮が関与していれば、テロ支援国家の指定解除など出来る道理がない。
テロ支援国家指定解除をめぐって国務省内部でも意見の対立があるという。性急なヒル交渉に対して、ライス国務長官もブッシュ大統領もヒル氏を遠ざけようとしているという観測もある。
いえることは、北朝鮮に対して無制限な譲歩をする政治環境ではなくなったということではないか。最大の問題だったイラク撤兵も大統領選の争点ではなくなった。加えて民主党のヒラリーとオバマの激しい争いは、共和党のマケインにとって有利に作用している。
ブッシュ政権はリスクがある北朝鮮のテロ支援国家の指定解除に踏み切ることに躊躇しだしたとみる。
ペリーノ大統領報道官は声明で、シリアが原子炉の建設を国際原子力機関(IAEA)に通知しなかっただけでなく、原子炉が破壊された後、直ちに隠ぺい工作を行ったとして非難。シリアに対し、核活動について説明するよう求めた。
民主党のバイデン上院外交委員長は「北朝鮮が拡散をしていないとの確認できない限り、米国は制裁を解除すべきではない」と早期のテロ支援国家指定解除には反対する考えを示した。
政治環境の変化が、ヒル交渉に影響を与えたとすれば、これほど皮肉なことはない。
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1784 ヒル交渉と矛盾する米政府公表 古沢襄

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