1790 ”渡り”と鳥インフルエンザ 古沢襄

秋田県の十和田湖畔で見つかったオオハクチョウ三羽の死骸と衰弱していた一羽から、H5型のインフルエンザウイルスが検出された。
数年前のことになるが、中国の青海湖でインドガンが折り重なって斃死していた。調べたら死因は鳥インフルエンザ。オオハクチョウもインドガンも”渡り鳥”である。インドガンはインド北部で越冬して、春の訪れとともにシベリアのバイカル湖を目指して”渡り”を始める。
その飛行経路の中継地に中国の青海湖、モンゴルのウブス湖があるのだが、インド北部で鳥インフルエンザに罹ったインドガンはバイカル湖まで行き着くことが出来なかった。
鳥インフルエンザは渡り鳥によって拡散されるという。日本にはインドガンは飛来しないが、他の渡り鳥がシベリアから東南アジアを目指してやってくる。日本も中継地になっている。
渡り鳥によって持ち込まれた鳥インフルエンザが、カラスやニワトリに伝播して広がるというメカニズムがいわれている。
夏に日本を訪れる鳥を「夏鳥」、冬に訪れる鳥を「冬鳥」、渡りの途中で日本に立ち寄る鳥を「旅鳥」と呼んでいる。オオハクチョウは「冬鳥」、夏の間シベリアで雛を育て寒い冬を日本などで過ごすという。
問題はオオハクチョウのH5型インフルエンザウイルスの感染経路である。”渡り”の前にシベリアで鳥インフルエンザに罹ったのなら、青海湖のインドガンの様に折り重なった斃死体があっても良さそうに思う。
さらには鳥インフルエンザが鳥だけのものに限らなくなった。それが人間に感染した死亡例が東南アジアですでに出ている。もっと怖いのは鳥インフルエンザが、人間から人間に伝染するようになると、その被害は中世のヨーロッパで発生したペスト被害を上回るという。
オオハクチョウから検出されたH5型インフルエンザのウイルスは、茨城県つくば市の動物衛生研究所で検査されているが、今のところ人への健康被害の可能性は低いという。
果たしてオオハクチョウだけのものか、養鶏場やカラスなどにウイルス被害が広がっていないか、”渡り”の中継地である日本にとって毒ギョウザと同じくらいの心配ごとである。
<秋田県の十和田湖畔で見つかったハクチョウの死骸から検出された鳥インフルエンザウイルスが、強毒性のH5N1型であることが29日、独立行政法人「農業・食品産業技術総合研究機構」の動物衛生研究所(茨城県つくば市)の調べで分かった。H5N1型の確認は、国内では07年3月に熊本県で見つかったクマタカ以来の例。(共同)>
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