1820 外務省の海外要人待遇 渡部亮次郎

2008年5月に来日した中華人民共和国の胡錦濤主席の接遇をめぐって国民の間に論議が高まった。中でも両陛下が胡氏夫妻の宿泊先のホテル・ニューオータニへ見送りに行かれることについては相当な識者から反対論が起こった。
しかし、胡主席や中国政権に対する感情はともかく、両陛下のお見送りを初め外務省、宮内庁の接遇には何の落ち度も、行き過ぎも無かったと断言する。一般の人が要人接遇の実態を知らずに感情でことを論じた故の空論であった。
つまり初来日の胡錦濤氏について福田政権は早くから国賓(国家による国家元首=天皇陛下の賓客)として迎える事を閣議決定し、この旨を陛下に「助言」し、外務省、宮内庁が実際の接遇に当たり、問題はなんら生じなかった。
たまたま今回は通常、国賓の宿泊先となるべき赤坂の迎賓館が改装工事中であるため中国側の希望でホテル・ニューオータニを迎賓館代用となった。従って両陛下のお見送り先もホテル・ニューオータニとならざるを得なかったものである。
ホテル・ニューオータニは日中国交正常化に伴って中華人民共和国が臨時の大使館を置いた由緒あるホテル。爾来、中国側は定宿としてこのホテルを使っている。
外国からの賓客の接遇方針の実際を担当するのは外務省である。その実態をフリー百科「ウィキペディア」等から引用して掲載する。
いずれにしろ両陛下がお見送りのため民間ホテルを訪問されたのは国辱物、叩頭外交だというのは無知に基づく誤解。感情論先行の議論に過ぎない。
それを社会的信用のある識者がインターネットで流すのは大衆を誤まった方向へ走らす煽り行為であり、慎むべきである。友人はこれを「田舎の発明家」と命名した。世間知らずのお山の大将ともいえる。
<国賓 こくひん
国家が賓客として招待する外国人。日本の場合,政府あるいは皇室によって招待され,国の費用で接待する。
国賓の対象とされるのは,普通,元首,国王,王族,閣僚,特使などであるが,国際間の往来が頻繁になった近年,閣僚,特使に対して国賓待遇を与えない事例も多くなってきた。
また,これらの公人でも私的な旅行のときなど国賓とされないこともある。>(世界大百科事典(C)株式会社日立システムアンドサービス)
<国賓は海外要人に対する外交慣例上における接遇上の扱いであり、おおむね10年に1度の頻度で当該国からの元首や要人の訪問にさいして行われる接遇上の様式である。
慣例では10年以内に国賓として遇された経緯のある対象国や元首に対しては国賓として遇することはなく、公賓ないしは公式実務訪問賓客として扱う。
国賓扱いによる接遇はあくまで儀式的なものであり、接遇による差異が訪問者や当該国に対する特段の政治的意味合いをもつ訳ではない[毎日新聞2008年4月30日] 。
日本 外務省における海外要人の待遇
日本の外務省における海外要人の待遇は、日本政府が滞在費用(対象者の宿泊滞在・国内移動・通信・警護費用等)を負担する公式訪問と、訪問者がすべての経費を負担する非公式訪問の2つに別れる。さらに公式訪問の場合は以下の5つの分かれる。
これらの計画、調整は外務省儀典官室がおこなっており、その長である儀典長は「首席接伴員」として日程に同行することになっている。
儀礼的要素が強いもの
(1) 国賓
対象: 国王、大統領など
宿泊: 迎賓館(国内の他の宿泊施設を利用することもある)
歓迎式典とお見送り: あり(歓迎式典での儀仗隊の栄誉礼および国歌演奏など)
天皇との会見: あり(天皇と皇后)
宮中晩餐会による接遇 :あり
(2)公賓
対象:大統領、皇太子、王族、首相、副大統領など
宿泊 :迎賓館(国内の他の宿泊施設を利用することもある)
歓迎式典: あり
天皇との会見 :あり 対象者が配偶者を同伴した場合、皇后も同席する
宮中晩餐会・昼食会 :午餐(昼食会)
実務的要素が強いもの
(3)公式実務訪問賓客
対象 :国賓、公賓対象者が実務的用件での来日の場合
宿泊 :ホテルなど
歓迎式典: なし
天皇との会見 :あり 対象者が配偶者を同伴した場合、皇后も同席する
宮中晩餐会・昼食会 :午餐(昼食会)ただし日程による
(4)実務訪問賓客
対象: 元首、首相、王族など
宿泊 :ホテルなど
歓迎式典 :なし
天皇との会見 :案件による
宮中晩餐会・昼食会: 原則としてなし
(5)外務省賓客
対象 :閣僚、主要国際機関の長など
宿泊 :ホテル
歓迎式典 :なし
天皇との会見 :原則としてなし
宮中晩餐会・昼食会 :原則としてなし
出典:フリー百科『ウィキペディア』
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