1824 眠る日本、狙う中国(最終回) 翻訳:平井修一

2008年2月27日の米中経済安保調査委員会での「国家主権とアクセス制御についての中国の見方」をテーマとした米国海軍軍事大学のピーターA.ダットン准教授(中国海事研究所)の分析を引き続き翻訳する。
中国の主権主張あるいは外国主権への抗議についてアメリカが影響を与える最も重要な方法は何か? 影響を与える最も成功しそうな手段は何か?
将来的に、主権を拡張・強化するための中国の武力行使に関して、中国軍の意思決定に対する米国の影響力を強化する4つの提案を述べます。
第一:すべてのレベルで人民解放軍と交流する。
直接的、個人的な関係づくりは、双方の誤解を防ぐのに役立ち、危機に際して緊張を緩和します。新しい米国の海洋戦略は、国際的な任務・約束への海軍の伝統的な関与を強調しており、戦争を防ぐ鍵となるものと期待されます。アメリカと中国との軍の接触に関する既存の法律および規制は早急に緩和され、最終的に除かれなければなりません。
基本的に軍の接触は誤算を避けるのに有効で、相互信頼を安定させる基礎をつくると期待できます。アメリカと中国の間の海に関わる共同任務は、我々の沿岸警備隊との協力関係ですでに盛んになっています。この成功は、より大きな任務と協力の基盤になります。
もう一つの方式も必要でしょう。具体的には、戦略的な対話において、国際的なシステムのなかで共通利害者として中国がその利点と同様に「メンバーとしての責任」を引き受けなければならないという明確な期待を強調すべきです。この点に関し、夏季オリンピックの国際舞台とそれに先立つ日々は、中国に重要な機会を提供するかもしれません。
現代の国際的な政治的・経済的な秩序への中国の完全な統合は、中国を大きく変えて発展をもたらしました。しかし、国際的なシステムと利点を受け入れたのならば、中国がシステムの不利な点を「例外主義で免れることができない」ことをアメリカは明らかにしなければなりません。
これは中国のためばかりでなく、中国の影響を受けている国、特に中国が主権と司法権について合法化しようとしている他のアジアの国々のためでもあります。これはひとつの関わり方、影響力の行使方法であり、アメリカが取り得る方法はまだあると思います。
第二:活発な軍による監視と調査を続ける。
皮肉なことながら、中国の軍事増強に関する透明度の低さが、米中関係で安定性を維持するのに必要な洞察を得るためアメリカが行なう情報収集活動を活発化させることになっています。
例えば、中国が不快とする沖合でのEP-3による偵察もそのひとつです。「軍事の透明度」の問題は何度も繰り返し中国に伝えられており、ゲイツ長官の2007年11月の訪中でも話されました。許容できる軍事バランスが対立への抑止力として役立つため、アメリカは東アジアで中国の軍事能力の範囲を理解するための情報収集活動を確実に維持する必要があります。
第三:海上と上空の伝統的な自由航行、沿岸国と国際社会の間の権利の歴史的均衡を保護する。
国際法によって近海と上空での軍の活動を実行するために、国際社会の権利を侵食する中国の学者、官僚その他による試みを精力的に排除しなければなりません。中国の海事法は中国の領海で、軍艦に広く認められてきたた無害通航権を制限するとしています。そのうえ中国は、国連海洋法条約が200海里まですべての調査権を沿岸国に付与していると誤った解釈をし、活発に非武装、民間の米国調査船を圧迫しています。
米国のEP-3監視と調査飛行が中国の主権を侵害し国際法を犯すと主張して、排他的経済水域の上空域まで支配の範囲を広げようとする中国の試みは、他国と協力しつつ排除されなければなりません。
さらに、アメリカは外交努力、国際フォーラムの正式な参加などに活発に携わり、国際社会と沿岸国の自由の伝統的なバランスを阻害する試みを排除しなければなりません。
第四:必要に応じて人民解放軍と対決する用意ができていること。
関係強化、情報収集、効果的主張だけでは武装対立を防ぐのには不十分でしょう。ニンジンに加えて、戦闘において勝つというアメリカの軍事能力は必要不可欠です。アジアでのアメリカ海軍の強いプレゼンスは我々の国益を保護するための最高の手段であり、周辺国との地域安全保障で現在の挑戦を越えていく必要があります。
米軍と人民解放軍の関係はここ数年で注目に値するほど前進し、ハイレベルの相互訪問、アカデミックな交換留学、海上共同訓練まで実施されました。将来はこれを基に、海上保安のためにアメリカと中国間の意味ある協力関係を作るべきでしょう。
しかし、将来においても「強い第七艦隊」は、人民解放軍の冒険主義、特に台湾海峡での対立の可能性に対する最も強力な抑止力です。衝突の際に強い海軍は米国の行動の自由を保証しますが、同時に重要なことは「強い海軍が対立の可能性を減少させる」ということなのです。(おわり)
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