政局について次の二つの記事が面白い。日経新聞によれば、「ひよっとすれば年内解散かもよ」と思わせぶりなことを匂わせていた小泉元首相は、完全に来年の任期満了選挙に戻ってしまった。
それにしては、このところ小泉チルドレンの応援に足繁く顔を出している。相変わらず”小泉人気”は衰えていない。夜の懇親会にも自ら声をかけて顔をだす精励ぶり。来年選挙なら、少し気を入れ過ぎている感じがなくもない。
民主党の方は年内解散・総選挙は必至とみて、六月三日から小沢代表が一ヶ月かけて主要十二県を遊説する強行日程を組んだ。このままでは中央政治の動きが七月の洞爺湖サミットに移り、民主党の存在感が薄れてしまう危機感がある。共同は「完全な選挙態勢」に入ることを小沢氏に狙っているとした。
<小泉純一郎元首相は12日夜、都内の日本料理屋で自民党の大島理森国会対策委員長や塩崎恭久元官房長官らと懇談した。次期衆院選について「今年は解散しないのが1番。来年の主要国首脳会議(サミット)まで解散せず、任期まで精いっぱいやればいい」と強調。小泉内閣で導入を決めた後期高齢者医療制度に関しては「政府は説明が不十分だ」と指摘したという。小泉氏が呼びかけ、深谷隆司、柳沢伯夫、伊藤公介各氏らも出席した。(日経)>
<民主党の小沢代表が早期の衆院解散・総選挙をにらみ、6月3日から7月1日にかけて約1カ月間で12県を行脚する強行日程を組んだ。自ら解散風を吹かせ、政府、与党を追い込むのが狙い。3日の宮城県を皮切りに岡山、新潟、奈良、山形、大分、宮崎、長野、沖縄、福岡、岐阜、秋田を訪問。菅代表代行や鳩山幹事長ら幹部も全国を回り「完全な選挙態勢」(小沢氏)に入ることで与党包囲網を構築したい考えだ。(共同)>
それにしても小泉元首相の派手な動きが突出している。パフォーマンスが苦手な福田首相に代わって、小泉氏が動くところ必ず”さざ波”が立つ。24日に山梨県で行われたシーファー駐日大使らとの懇親ゴルフは、洞爺湖サミットに出席するG8各国の大使を招く交流の場という狙いがあった。
ゴルフ参加はシーファー大使だけだったが、小泉氏、麻生前幹事長、中川元幹事長が出たので、政局がらみと騒がれテレビが殺到。小泉、麻生の仲は必ずしも良くなかったが、このゴルフで二人の仲が修復されたと憶測まで呼んでいる。
<自民党の小泉純一郎元首相、麻生太郎前幹事長、中川秀直元幹事長らが24日、山梨県内でシーファー駐日米大使とゴルフに興じた。福田康夫首相に近い衛藤征士郎元防衛庁長官が、北海道洞爺湖サミット成功に向けG8各国大使との交流を企画したが、参加は米国のみ。むしろ福田政権支持へ党内の親睦(しんぼく)を深める場となった。
報道陣に囲まれ、小泉氏は「すごい重圧だ」と素振りを繰り返したが、第1打でフェアウエーをとらえた。上級者の麻生氏は逆に第1打をミスし、「気配りがいいでしょ」。これを見た中川氏は「私も少し意識し始めてきたな」と意味ありげな一言を漏らした。成績は麻生氏が上回った。
ゴルフには日本経団連の御手洗冨士夫会長らも参加。懇親会にはロシアと欧州連合の大使も駆けつけた。(毎日)>
政界の一寸先は闇といってしまえば、それまでのことだが、これからのシナリオを描いてみる。当たるも八卦、当たらないのも八卦。
自民党は明らかに二つの路線がでてきた。保守が国民の支持をつなぎ止めるには、年金・医療など国民福祉で手厚い政策を示す必要がある。その財源を消費税の増税に求めるか、それを避けるかという違いである。
政策的にいえば前者が妥当なのだが、政治的にいえば増税で政権を失うリスクを伴う。前者は与謝野前官房長官、谷垣政調会長ら。福田首相は態度を明確にしていないが、こちらの路線だろう。ただ消費税の増税は、民主党との政策協議が成立するのが条件と福田氏はみている。小沢代表との大連立話もこの筋書きの上に立っている。
”上げ潮路線”を唱える中川元幹事長は、小泉改革を堅持して日本経済の体質を強化していく中で、国民福祉の財源を求めようとしている。経済の体質が強化され、日本経済全体のパイが広がり、税収が増えて国民福祉の財源が得られるという考え方。
この路線対立は、戦後日本の経済政策を通して存在している。池田元首相が主導した高度経済成長政策は、いうなら”上げ潮路線”。これに対して福田赳夫氏は徹底して反対している。池田後の佐藤内閣では蔵相として安定経済成長に舵を切った。
佐藤後の田中内閣では、再び成長経済に重点が置かれて福田路線は色褪せた。そうはいっても、高度成長か安定成長か、というはざまの中で日本経済はバブル崩壊まで順調に伸びてきたといえる。問題はバブル崩壊後、このサイクルが機能しなくなったという不安感である。そこに消費税に財源を求める思考が生まれる。
政権をとっていない民主党は福祉充実の要求さえしていればよい。だが政権を握った途端に財源問題に直面する。
多くの人が見逃しているが、民主党が政権を握れば共産党や社民党との関係が密になるということである。それは自民・公明連立の下で自民党が公明党の政策に歩み寄らざるを得ない関係と似ている。
参院で多数となった民主党だが、単独では過半数を得ていない。共産党や社民党、国民新党との野党連合で多数を得ている。消費税の増税には共産党や社民党は強硬に反対するであろう。福祉の財源は防衛費の削減に求めることになりかねない。共産党は大企業に対する増税を求めるであろう。
保守の中では高度成長か安定成長かという路線論争だが、民主党が政権を握ると大きい政府か小さい政府かという問題をめぐって路線論争が生まれる気がする。福田首相が自民党にとって最後の首相にならねばよいが・・・。
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