1875 モンゴルが参加する新グレードゲーム 宮崎正弘

ロシア、中国、米国との三角関係を均衡感覚で生き延びる智慧。
メドベージェフ(ロシア大統領)が四川省大地震直後に北京を訪問し、協力関係を確認したことが大きく報じられた。
メドベージェフ大統領は、初の外遊=中国歴訪の前に、じつはカザフスタンの首都アルマトゥへ四日間立ち寄った。ロシアによってカザフスタンの石油とガスのほうが中国関係より大事だから?
じつは、その四日前、モスクワを訪問したのは、モンゴルのエレンバヤル大統領である。メドベージェフが就任後初の外賓はモンゴルの元首だった。
ロシアのグレードゲーム感覚は、冷戦終了後に突如米国との関係強化に踏み切った、この嘗ての保護国=モンゴルを、ふたたびロシア影響圏へ戻すことであり、その戦略の一環としてロシアはモンゴルに石油を特別価格で提供している。
1バーレル89ドルという(「ユーラシア・ディリー」、5月24日付け)。
ロシアからの石油は鉄道輸送が主だが、その主役「ウランバートル鉄道」も49%の株主はロシア。
ついでに言えばエレンバヤル大統領もバヤル首相(人民党党首)も、モスクワ留学組である。
しかし経済のひ弱さと流通システムの欠落からモンゴル経済は猛烈なインフレにあえぎ、インフレ率は前年同月比で15%を記録した(08年4月)。国民の不満は高まっている。
ジェーコフ元帥の記念館がウランバートル市内にいまも残存し、大きな銅像が立つ公園もある。
ロシアの軍事的プリセンスは消滅したとはいえ、この国がロシアのメンタリティから完全に抜け出すことは難しいだろう。
街の看板も白鳳、朝青龍だが、モンゴル文字はなく、ロシア語に英語が併記されている。大学でこそ、英語を教えているが、町中では英語は通じない。
▲モンゴル重視の米国外交はポーズだけ?
5月21日、ウランバートルのチンギスハーン国際空港は、ときならぬ大型代表団を二組むかえた。
一組は、クレムリンが派遣した国防大臣以下のロシア軍幹部の表敬訪問団。大型使節団だった。モンゴルはロシア、中国主導の「上海シックス」にオブザーバ加盟をしている。
もう一つの賓客。それは米国海兵隊太平洋司令官ジョン・グッドマンの訪問で、モンゴルはイラク戦争で、米国に協力し、モンゴル軍人173名を派遣している関係もある。
だが地政学的条件から言えば、ロシアと中国に挟まれ、原油はロシアから、物資は中国から輸入し、かわりに地下資源を鉱区ごとロシアと中国に売却しているモンゴルとしては、遠い米国との関係は、バランス緩衝材いがいの何物でもないのではないか。
   
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