■1.加害者と被害者の人権格差■
昭和44(1969)年、神奈川県の高校一年生が同級生のAに殺害されるという事件が起きた。Aは少年院に収容されて無償の教育を受け、出所後、大学を卒業して弁護士になり、現在は裕福に暮らしている。一方、殺された高校一年生の母親は年金頼みの苦しい成果を強いられているが、Aからは謝罪も賠償もない。Aは母親に対して、「お金がないのなら貸してやる。印鑑証明と実印を持って来い」と言い放ったという。[1,p157]
人権を十二分に保護されている加害者と、人権を無視されている被害者との矛盾を端的に表している実話である。このほかにも加害者と被害者の人権格差には、様々なものがある。
1) 加害者は少年院や刑務所で衣食住を保証され、病気になったら、治療もただで受けられる。被害者は犯罪被害の治療でさえ、自分で支払わねばならない。
2) 加害者は刑事裁判で有罪となっても、被害者から民事訴訟で訴えられない限り、慰謝料支払いや損害賠償をしなくとも良い。
3) 加害者は国の費用で弁護士をつけて貰い、法廷で被害者に責任を押し被せるような発言もできる。被害者は何の発言権もなく、傍聴席でじっと聴いていなければならない。
4) 加害者はマスコミでの氏名や写真などの公開をプライバシーの侵害として拒否できる。被害者にはプライバシーもなく、実名・写真報道される事が多い。
5) 刑期を終えた加害者は出所しても、前科者として周囲に知らされることがない。逆に、被害者の方は加害者の出所も住所も知らされないので、いつお礼参りに来られるのか、怯えていなければならない。
幸い、犯罪被害者たちの運動により、こうしたひどい状況は是正されつつあるが、人権派と呼ばれる抵抗勢力が加害者の人権のみを守ろうとして、被害者の人権を踏みにじっているという傾向はまだまだ根強い。こういう不正義を少しでも無くしていくためには、一般国民がこの問題をよく知ることが必要である。今回は、この問題を掘り下げてみよう。
■2.犯罪加害者のための完璧な福祉社会■
まず経済面での加害者天国ぶりを見てみよう。
我が国の犯罪加害者への支出は年間354億円に上る。それに対して被害者への支出は11億3千万円と、30分の1に過ぎない。
354億円の内訳は以下の通りである。[1,p27]
・国選弁護士費用 75億7千万円(平成17年度決算)
矯正収容費(平成18年度予算)として
・食料費 165億7千万円
・代用監獄内での被告人の食料費等 85億2千万円
・被服費 12億2千万円
・入浴費用 5億円
・医療費 9億6千万円
・受刑者就労支援 1億7千万円
この他に刑務所や少年院の施設費を「住居費」として考えれば、「衣食住・医療・教育」までの完璧な福祉社会が犯罪加害者には約束されているのである。
■3.国費を食い物にする人権派弁護士たち■
国選弁護士費用は、トンデモない弁護士への報酬も含まれている。オウム真理教の松本智津夫の審理では、国選弁護士が重箱の隅をつつくような枝葉末節の尋問を繰り返して訴訟を意図的に遅延させ、第一審判決が出るまでに8年近くかかった。この間に弁護士たちは国から4億円以上の報酬を得ている。[a]
また山口県光市母子殺害事件は、18歳の加害者が若い母親の首を絞めて殺した上でレイプし、11カ月の乳児を床に叩きつけて、用意していた紐で絞殺するという残忍な犯罪だった[b]。加害者は一度は「生涯かけて償いたい」と涙ながらに述べていたが、最高裁では一転して「被害者を姦淫したのは、生き返らせるためだった」などと荒唐無稽な供述を展開した。これも弁護人らの差し金だろう。
この弁護人2名は、弁論期日に「日本弁護士連合会の裁判劇のリハーサルがある」ことを理由に裁判を欠席して延期までさせている。被害者の遺族7人は、裁判に出席するために、仕事を休み、旅費・宿泊費を払って、上京していたのである。遺族の本村洋さんは「弁護人のとった行動は被害者遺族を侮辱しているだけでなく、法を信じている国民をも侮辱していることだと思います」と述べた。
もちろん国選弁護士の大部分は職務に忠実な人たちだろうが、ごく一部の人権派弁護士たちは好き勝手に裁判を引き延ばして、国費を食い物にしつつ、加害者の刑を少しでも軽くしようと画策しているのである。
■4.加害者の衣服費よりも少ない犯罪被害者等給付金■
一方、被害者が受け取れるのは、犯罪被害者等給付金11億3千万円(平成17年度支給裁定額)で、加害者の衣服費にも満たない金額である。
一家の大黒柱が殺されても、遺族に支払われるのは最高でも1573万円で、平均は4百万円余り。特に被害者が20代、30代の場合には子どもがいても、5百万円程度しか給付されない。自動車事故での死亡には遺族給付として3千万円が支払われるが、これに比べれば、あまりにも低い。
加害者の医療費は9億6千万円。被害者を襲った際に怪我しても、警察は病院に連れて行ってくれて、ただで治療してくれる。さらに留置所や刑務所で病気をすれば、これまた全額無料の治療を受けられ、入院が必要な場合は、医療刑務所に入ることができる。
これに対して、被害者の方はどうか。平成11年9月、東京の池袋で娘さんが通り魔に殺された事件が起こった。娘さんは救急車で病院に運ばれ、4時間後に亡くなったが、その間の治療に要した費用約170万円の請求書が遺族に送付された。娘さんを奪われた上に、こんな請求書を受け取った遺族の気持ちはいかばかりだったろう。
平成9(1997)年に神戸で起こった児童殺傷事件では、加害者の「少年A」には、精神科医たちがチームを作り、莫大な費用をかけて「更正」に向けた取り組みがなされた。その一方で、被害児童の兄は、大変なショックを受け、医師による治療を必要としたが、その莫大な費用は自前で払わねばならない。
しばらく前から、被害者の治療費は国から給付されることになったが、それも一年が限度であり、後遺症が残っても、リハビリ費用や介護費用は被害者の自己負担である。
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