台湾も中国と同様に尖閣諸島の領有権を主張している。その台湾の劉兆玄行政院長(首相)が立法院(国会)で、日本との領有権をめぐる争いについて「開戦の可能性を排除しない」と答弁した。
日本の巡視船と台湾の遊漁船の接触事故についての質疑で、勢いあまっての発言ということのようだが、政治リーダーとしては当然の弁である。
自分のところの領土であると主張する以上、最終的には戦争で奪い取るのが古今の国際常識だ。サッチャー英首相がフォークランド奪還戦争をやったのも、国際的にはなんら非難されなかった。
台湾にはその国際常識があるのだが、日本にはない。憲法9条の制約によるもので、そこが日本の外交パワーを減殺させる最大の要因だ。
北朝鮮が拉致問題について「再調査」を約束したことで、対北制裁の部分解除が進められる方向なのだという。北朝鮮の手口には、これまで何度も煮え湯を飲まされてきたはずなのだが、日本政界の一部にある歓迎ムードはいったい何なのか。
拉致問題は北朝鮮の国家犯罪だ。ひそかに侵入した工作員によって大量の日本人が拉致され、日本の主権が侵害された。
国民の生命を守るのが国家の最高の責務であるはずなのだが、日本政府はこれを果たせなかった。その屈辱感が政治指導者にいまもあるのかというと、これまたなんともあやしい。
憲法9条があろうとも、主権侵害に対する防衛手段は否定していないのだろうから、拉致問題は「開戦排除せず」の対象であるはずだ。対北制裁は戦争の代替手段としての意味があったからこそ、北朝鮮は「宣戦布告だ」と反発してきたのである。
「開戦」の一歩手前でのぎりぎりの外交交渉なのだという深刻な認識が、日本政治には決定的に欠けている。再調査の表明程度で一定の進展があったとし、「それ制裁解除だ」となるのも、そのためだ。
拉致も領土も同様だ。ハナから「竹光」であることが分かっているサムライなど、怖くもなんともない。
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1946 「開戦排除せず」の重み 花岡信昭

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