1962 2009年の米国家安全保障 宮崎正弘

アメリカは次の歴史のチャプターは「改革の政治循環期」へ突入する。あのゲリー・ハートが新作で「FDR時代」から「レーガン時代」の次の循環。
ゲリー・ハートって誰でしたっけ?
1984年、米国大統領選挙、民主党予備選に彗星のごとく現れて、本命候補を脅かした元コロラド州選出の上院議員。
じつは、84年当時、この男を追いかけてアメリカの東海岸から西海岸へキャンペーン部隊を取材した経験があります。
泊まっていたワシントンのホテルへ電話をかけてきたのは、当時『週刊文春』の副編集長だった斎藤禎さん。「ハートを追いかけて、談話をとって下さい」。
凄まじい勢いが突如しぼんだのは、ゲリーハートと或る女性との醜聞で、ワシントンに屯する「その筋」の女性との現場をスクープされ、あぶくの如く消え去りました。NY知事が高級売春婦との関係がばれて辞職したようなものです。
それから四半世紀。
ゲリー・ハートは歴史家シュレジンガーの影響をつよく受けて、歴史分野の著作に進出し、『鷲の翼の下で ――2009年の米国国家安全保障』をあらわした。
その抜粋から拾うと、―
「米国の政治は循環期が交替する特質をもち、たとえばFDR時代(1932-1968)はニューディール哲学で政治が運営されてきた。つぎの政治循環は「レーガン時代」と言って良く、概括的には1968-2008年のアメリカ政治は減税と小さな政府だった。
現下、共和党は「派閥連立」(宗教右派、外交を主導するネオコン、劇的な減税をめざすサプライサイダー)だが、イラクで戦争に失敗し、大幅な赤字を積み重ねてしまった。
 伝統的保守は、戦争による介入に反対の立場であり、プライバシーの尊重、予算削減などで、いまは目に見えないとはいえ、十年ほどかけて、いずれ新共和党として行動を起こすだろう。
▼ニューディールを克服できる民主党の哲学って何だ?
他方、民主党はいまも『ニュー・ディール』を越えるイデオロギーを確立してはおらず、「曖昧」と「中道」の八年間(前クリントン政権)のあと、次にもし、オバマが選ばれるとすれば稀な再建の機会を得るだろう。
ロバート・レッドフォードが映画『候補者』のなかで吐いた名台詞は「我々はいま、何をするべきか」であったように、『チャンジ』一本槍の政治綱領を具体化し、次の三十年、四十年のアメリカ政治を領導する政治原則を提示する機会があるという意味である。
世界は従来の地政学を越えて、インド中国の台頭、環境汚染、地球温暖化の挑戦、夥しい人口動態の変化、とりわけ中国人に象徴される大量の移民。情報革命と新しい世界市場などに対応できる、新しい政治環境に呼応できる基礎を固めることが出来る
(言外にオバマ民主党に、そのチャンスがある、と示唆している)
それらは、
 第一はアメリカが消費経済構造から製造する体質への転換
 第二は、新しい冷戦以後の安全保障
 第三は、地球を救う道義的義務の遂行
である。
目下のアメリカは大統領選挙を迎えて歴史的な分水嶺にあり、旧来の政策も政党も、旧来のイデオロギーも次の政治には対応できないことを国民の多くは本能的に知っている。
政府の概念を、政治の概念を改革する、新しい政治循環が始まるのだ、とゲリーハートが新作で結んでいる(ヘラルドトリビューン、26日付けより要約)。
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