2025 花粉症物語 古沢襄

「?(鼻の右に九と書く)鼻」と書いてキュウビと読む。東洋医学の用語だが、古くから使われている。花粉症のことである。症状は突然に鼻がムズムズし、くしゃみが止まらず鼻水が流れるというから、花粉症はかなり昔からあったものらしい。
戦後、しばらくは花粉症は目立なかった。あったとしても今の様に広まってはいなかった。花粉症が騒がれだしたのは1960年代ではなかったか。戦後の食糧難の時に米国のトウモロコシなどの食糧援助を受けたのだが、それと一緒にブタクサの種が入っていて、日本全国の空地や河原などに繁茂した。
秋になるとブタクサの黄色い花粉が舞う。それが花粉症の犯人だといわれた。しかしフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』によるとブタクサは北アメリカ原産で明治初期に渡来した帰化植物だという。
ところが私の経験では戦前には今ほどブタクサが繁茂していなかった。旧制中学の一年生から二年生にかけて空地や河原の雑草を刈り取る勤労動員に駆り出されたが、蘆が繁るのはよく見たもののブタクサの記憶はない。
明治時代に北米から渡来したブタクサと戦後のブタクサでは繁殖力などで種類が違うのかもしれない。アメリカの全人口の10%がブタクサ花粉症の悩まされているとの統計もあるそうだ。恐るべし北米産のブタクサ。
日本古来のスギやヒノキの花粉も花粉症の犯人。大都会ではブタクサ花粉症があるが、地方にいくとスギやヒノキ花粉症に悩まされている人が多い。女子プロゴルファーの多くが花粉症に罹って悩まされていたが、ツアーで地方遠征をするので、飛来するスギ花粉症が多いという話を聞いたことがある。
東京から北陸に転勤になって、毎週のように友人たちゴルフをやったが、突然、鼻がムズムズし、くしゃみが止まらなくなった。風邪をひいたと思って金沢の病院に行ったら「流行の花粉症ですよ」といわれた。
抗アレルギー剤を貰ったが、どうも治らない。明け方になって温度が下がると猛烈なくしゃみに襲われる。そこでアレルゲンを特定して「減感作療法」をやることになった。背中に三列各四個のアレルゲンを微量注射して反応をみた。真っ赤に反応したのはブタクサでなくてスギ花粉。
一番大きく反応したのはハウスダストと言われた。そこでハウスダストとスギ花粉の対処法が必要となった。今ではアレルゲンを特定するのに採血検査で簡単に出来る。「減感作療法」というのは、アレルゲンをごく微量から注射していって、過剰な反応を起こさない体質改善の療法。毎週、病院に通って半年かかったが、あれほど悩まされた花粉症がピタリととまった。三十数年前のことになる。
だが最近では花粉症が蔓延して、いくつものアレルゲンを持つ患者が増えているので、「減感作療法」が流行らないという話を聞く。忙しい現代人にとっては根気のいる治療法だから廃れたのかもしれない。
今ではアレルギー反応全般を抑えてしまう免疫抑制剤が用いられるというが、対症的な治療だから根本的な治療にはならない。
ハウスダストとスギ花粉は抑え込んだ私だが、この数年、時折、連続くしゃみが出るようになった。そんな時に出会ったのが東洋医学のキュウビ(花粉症)療法。
キュウビ療法はアレルギー症状は①肺の臓②脾の臓③腎の臓のいずれかが悪いために身体に歪みがでているので、その臓器の治療を優先している。私の場合は腎臓病が完全に治癒せずに四年前から尿蛋白が出ていた。
肺の臓はヘビースモカーだった割にきれいな肺をしているといわれてきた。脾の臓とは消化吸収器官の総称で、小腸、胃、十二指腸、すい臓などを指すが、胃潰瘍に悩まされてきた。
漢方薬は服用しないが、この四年間で腎臓病と胃潰瘍の治療に専念して、いずれも昨年暮までに完全治癒した。今年はまだ花粉症の症状がでない。代わりに女房が大きなくしゃみをするようになった。
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