五輪テロ警戒は尋常ならざる状況。戦々恐々の裏返し。チベット活動家の遠戚まで北京から強引に国外退去させる。
英国籍だが人種的にはチベット人であるデチャン・ペンバ(三十歳)は、北京で弐年半にわたって英語教師をしていた。
7月8日朝、突如、彼女のアパートへ九人の公安がやってきて、「家を出ろ、ロンドンへ帰れ」と告げ、パスポートと携帯電話を取り上げた。
荷物は一個だけ、午後のロンドン行きに乗れ、と。家財道具は? 返事はなかった。かわりに「以後、キミは五年間、中国への入国が禁止される」と一方的なお告げがあった。
何の嫌疑か、ペンバには分からないと「ロスアンジェルス・タイムズ」に語った(同紙、7月10日付け)。
「たぶんチベット人の友人たちをアパートに呼んだから?」。
北京の公安はそれ以上の情報を掴んでいたようで、五月に彼女が短期的にロンドンへ帰った折、アパートが踏み込まれた明らかな形跡があった。
彼女の父はチベット人であり、ベルリンで人権運動に関与したこともある。
叔父のツェリング・シャクヤは名の知られた作家で、『雪国にやってきた龍』(チベットを侵略したシナ人)の作者だ。
ペンバは在中国英国大使館へ電話もかけることが許可されず、最後の乗客として機内に入る直前にやっと携帯電話をパスポートを中国の公安が返してきた。
それにしてもチベットの活動家の遠戚までを北京から強引に国外退去させるという行為は、テロ警戒が尋常ならざる状況であり、当局の戦々恐々とした心理の裏返しであろう。
杜父魚ブログの全記事・索引リスト(7月7日現在2022本)
コメント