2095 水戸藩「子年のお騒ぎ」後遺症 平井修一

幕末・維新の戦争でも、悲惨としか言いようがない事件のひとつは水戸藩の騒動だろう。「子年のお騒ぎ」と呼ばれ、元治元(1864)年の水戸藩に血で血を洗う、骨肉相食む抗争をもたらした。
素人の小生が改めて言うまでもないが、尊皇攘夷派(討幕派、後に開国派。黒幕は英国)と、公武合体など幕府・幕藩体制支持の佐幕派(開国派、後に朝敵として倒される。黒幕はフランス)の争いは、当時はすべての藩であったろうが、水戸藩ではそれ以前から藩主の後継争いなどがあったために、ほとんどカオスになってしまった。もうぐちゃぐちゃの乱麻状態。
この騒動の背景には水戸(茨城県)の人々の性格のようなものがあるのだろうか。ネットで調べたら、こんな情報があった。
<「茨城巡査」という言葉がある。「水戸の三ぽい」といって「水戸者は、理屈っぽい、骨っぽい、怒りっぽい」。正義感が強く、順法性が高く、保守的傾向が強いところから、正義を守る警察官向き、ということでしょうか>
<古くから中央政権とは利根川に隔てられたせいもあってか未だに陸の孤島で閉鎖的。封建的集落社会。大人も子供も縦型の関係でつながれている。
大人なら地主や金持ちが威張ってるし、子供同士なら気の強い奴・ケンカの強い奴が幅利かせてる感じ。
人と人との心の距離は近め。と言っても西日本のような1対1の対等の人情味ではなく組織の一員として個の意識が薄れさせられている感じ>
理屈っぽくて、頑固で、敵を容赦しなければ、これはもう騒動は免れ得ない。水戸藩士族の娘、山川菊栄著「武家の女性」は、政治向きの話はまったく知らなかった女子供までもがこの騒動に巻き込まれて悲惨な目にあったことを淡々と記している。
<藤田東湖逝き、次いで烈公(水戸斉昭)も亡くなったあとは、藩主はぬけがら同様の暗弱な人物、藩士はドングリのせい比べで政治的才能ある中心人物に乏しく、藩政は動揺に動揺を重ね、これに全国的な政治不安が作用して、藩の内紛が内乱にまで発展したのが「子年のお騒ぎ」でありました>
<多年抑えられていた保守派(諸生党)が、(筑波山で蜂起した)藤田小四郎一派(激派、天狗党)の挙兵が輿論の反対を買っている隙に乗じ、賊徒討伐、治安維持を名として、巧妙に策動し、水戸の政権を乗っ取り、激派、(融和をねらう)鎮撫派を一挙にして粉砕したのでありました>
<ひとしお痛ましいのは主立つ人々の家族でした。(激派の)武田耕雲は二人の大きい息子と一緒に斬罪となりましたが、年の行かぬ子供や孫、妻も嫁も合わせて男8人女3人、、一家11人がこの事件の犠牲となりました。
長子彦右衛門の妻いくは、東湖の妹で、15歳、13歳、10歳の3人の男児と一緒に入牢中、「論語」を教えていたのを牢番が見て、「どうせ死んでいく子に、そんなことをしても無駄だろう」というと、いくは居ずまいを直して、「この3人のうち、ひょっとして1人ぐらいは赦されないとも限らない。そのとき、学問がなくては困るから」と答えたといいます>
3人はいずれも斬首、いくは絶食して果てた。当時女は一人前とみなされていなかったので罪は1等減じたから死罪は稀だが、武田耕雲の妻は「逆徒の張本人の妻」として3歳の息子ともども斬首。
<武田の妻は、ある日珍しくお膳にお刺身がついていたので、はっとしました。もちろんこれは死出の門出の、最後のご馳走の意味でした。そうとも知らず、抱いた子が喜んで手を出そうとすると、「武士の子は首を切られたとき、腹の中にいろいろのものがあっては見苦しいから」と抑えました。
かねてみはなしと思へど山吹の花もにほはで散るぞかなしき
というのがこの母の辞世でありました>
「自分はもとより死は覚悟しているが、蕾のままで死ぬ幼い子が不憫だ」と母の悲しみを伝えている。
この騒動で戦死、死刑、獄死などで死亡者は2000人にもなった。万延元(1860)年、桜田門外の変で大老・井伊直弼を殺害し明治維新のスタートボタンを押したものの、水戸藩パワーは自滅してしまった。以下、ウィキによる。
<保守派・諸生党によって完全な佐幕派となってしまった水戸藩に対し、戊辰戦争が勃発すると諸生党に対する追討命令が朝廷から出された。
これにより激派・天狗党の残党が次々に水戸藩に舞い戻り、一気に勢力を逆転し、今度は親の敵とばかりに諸生党を激しく弾圧した。
これら度重なる内部抗争により多くの血が流れ、才能が消散してゆく。激動の幕末期において一時は牽引役として活躍した水戸藩も、ついにはこれといった才覚ある人物もいない状態となり、明治になってみれば新政府に1人の要人を出すこともできなかった>
水戸、茨城県は関東地方でありながらすこぶる存在感が薄い、と小生は思うが、偏見か。水戸納豆と潮来花嫁さん、梅くらいしか思い浮かばない。
今の県民性を検索したら「茨城人は、怒りっぽい、飽きっぽい、忘れっぽい」だと。茨城県民、奮起せよ! ま、「お友達の厭がることはしない」という、怒ることさえない「飽きっぽい、忘れっぽい」だけの日本人だから偉そうなことは言えないか・・・
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