2113 競合する女性像・野田聖子と小池百合子 古沢襄

日本で初の女性首相が誕生するとすれば、野田聖子首相といわれたのは十年ほど前のことである。人気低迷状態にあった小渕恵三内閣で三十七歳で郵政相に抜擢された。就任に際して小渕首相は「将来の女性首相候補」と持ち上げたという。
1960年9月3日生まれ、東京の雙葉学園高校を中退してアメリカのジョーンズヴィル・ハイスクールに入学、卒業して上智大学外国語学部を卒業したから英語はベラベラ。
日本外国特派員協会の講演会で郵政民営化法案について問われ、「今後どうなるかは分からないが、ひとつだけ言えることがある、ミスター小泉はもはやダイナマイトではない(威力は低下している)」と英語で即答した。
「I don’t know (if there will be political confusion) , but one thing I can tell is, Mr. Koizumi is no longer dynamite.」これには約百人の記者団・特派員からどよめきと喝采を浴びている。
しかし小泉内閣で郵政民営化法案に反対、2005年総選挙では公認を得られずに刺客候補の佐藤ゆかりさんを送り込まれるなど苦労する。厚い支持母体に支えられて佐藤ゆかりさんを退け五選したものの安倍内閣で復党が認められるまで無所属。
自らを保守本流と自認し①日本国憲法の精神②自由民主党の原理原則に基づく政治を主張する野田聖子さんだから、自民党を追放された衝撃は想像を上回る。それだけに福田首相によって復党間もない身でありながら内閣の看板となる消費者相を任されて、心中深く期すものがあるだろう。
もともとが自民党の全盛時代に議員になった人ではない。1994年の総選挙で初当選したが、自民党は野党に転落、細川政権時代は野党議員として活動してきた。小泉政権下の無所属といい”撃たれ強さ”が、いつの間にか身に備わって「ぶれない政治家」に変身している。
「将来の女性首相候補」という看板は、このところ小池百合子元防衛相の独り占めだった観がある。野田聖子さんが逆らったせいでもあるまいが、小泉元首相は”華のある女性議員”として小池百合子さんにご執心。
1952年7月15日生まれ、関西学院大学社会学部を中退して、カイロ大学文学部社会学科を卒業しているから、英語とアラビア語には通暁している。帰国後、日本テレビやテレビ東京のキャスターで名を売り、1992年の参院選挙で日本新党からでて当選。
野田聖子さんとほぼ同時期の政界入りだが、小池百合子さんは細川護熙、小沢一郎、二階俊博、小泉純一郎、といった”権力者・実力者”から重用され政党を渡り歩いてきた。「政界渡り鳥」と揶揄され、野田聖子さんの「ぶれない女性議員」とは対照的。
小泉時代の郵政総選挙では兵庫六区から東京十区に刺客候補として落下傘降下して、無所属と民主党の対立候補を鎧袖一触退けた。夏の軽装化キャンペーン「クール・ビズ」の旗振り役となり、日本で初の女性防衛相になるなど話題にこと欠かない。
小泉・竹中改革路線から距離を置きだした福田首相に対して、小泉元首相や中川秀直氏ら”上げ潮派”は、小池百合子官房長官を推す動きがあったという。内閣支持率をあげて、ポスト福田で小池株を高め、一気に日本初の女性首相を狙う作戦だったのではないか。
福田首相が小池官房長官をとらずに野田消費者相を選んだために新聞やテレビでは”聖子株”が上昇気味だが、私は第二幕があると思っている。ポスト福田では麻生太郎幹事長が最有力になったのは間違いない。
しかし小泉・竹中改革路線を後退させないで、中川氏の上げ潮路線を進めるために麻生氏の対抗馬として小池擁立論が遠からず出てきそうな気がする。ヒラリー・クリントンの挫折のように日米で女性のトップになる道はまだ険しいとは思うが、トップランナーは小池百合子、セカンドランナーは野田聖子になるのではないか。
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