いよいよ明日、北京五輪は準戦争状態で開幕。民を防衛体制の先兵に配置して、北京政府の思惑は奈辺に有りや。
北京オリンピック、別の視点で観戦したい。
(1)戦争状態として見ると各地の警備態勢は「内乱対応型」ではないか?各地の厳戒態勢の中味は、ボランティアという「民防」「自警団」の再組織化に成功している。
競技会周辺の警官は荷物を開けさせる権利を付与されている。過剰防衛という声は庶民からは上がらず、外国メディアが異常を伝えるのみ。
主要な競技会会場周辺ではX線検査と、ボディチェックがある。ライター、液体、横断幕などが回収される。これはひょっとして未来に予想される少数民族の反乱、内乱のための予行演習?
(2)民間の情報協力態勢も敷かれた
瀋陽ではタクシー運転手に「重要治安情報を提供すれば、最高50万元(約750万円)の報奨金」制度が通告された。
市内だけで2万台もあるタクシー(瀋陽は700万都市)が、いきなり“パトカー”に早変わり(しかし以前からタクシーは密告制度を強要されており、北京では多くのタクシーに録音機が内蔵されているとの情報もある。合肥などのタクシーも半分は公安と連絡があるという話を聞いた)。
(3)監視カメラはオーエル『1984年』を思い出させる
北京市内で新設された防犯カメラ、実に22万台(合計30万台という)。 北京のみならず上海も青島も公共の路線バスには制服警官のほかに私服も乗り込む措置が取られている。
以前から目的地によって乗客全員をヴィデオ撮影していた(とくに深セン向けの長距離バスに乗ると身分証明書の提示も求められた。今回は北京へ向かう長距離バスの全てで実行された)。
(4)学徒動員態勢も組めた
北京市内のボランティアは10万人とも22万人ともいう。空港だけでも2200人の大学生ボランティアがいる。これは「学徒動員」さながらである。週刊朝日(8月15日号)でも小生は指摘しておいたが、空港のボランティアはヒンズー語、アラブ語など語学研修の学生が主体で空港内で外国人の案内役を買って出ている。
会場周辺も殆どが学生のボランティアで成り立っているが、ちょうど夏休み故に、この態勢が組めた。
また青藻異常発生の青島では徐去作業に軍、市職員のほか、地元大学に通う大学生一万余を動員した。
(5)ホテルに電流を流し、予防戦争のごとし
サッカー会場の上海の「上海体育場」と隣接のホテル「華亭賓館」はフェンスで囲まれ、「電流注意」の表示。ほかのホテルも警備員のほうが客数より多いところがある。
上海体育場の敷地内には公園もあり、レストランもあるが、一般の立ち入りが禁止され、武装警察が50メートルおきに立つ。これだけで1万5000人の軍隊が配置されている。サッカーは警察国家のもとで行われる。一番警戒を要するからだ。
老舗ホテル「華亭賓館」は五輪関係者用だけしか宿泊出来ない。
地下鉄駅では検査。路線バス計1600台には監視カメラが設置、下水道もカメラによる監視体制が敷かれる。
げんに上海では5月、通勤ラッシュの路線バスで可燃物が炎上、3人が死亡、12人が負傷した。7月にはナイフ男が警察署を襲撃、警官ら11人を殺傷する事件が起きた。
(6)人釘人(レンティンレン)の五人組監視制度が復活?
人釘人という懐かしいフレーズ、文革の時に毛沢東は五人組制度を強要し、密告させて連帯責任を取らせた。
いま北京、上海などの胡同では住民がさながら「自警団」。大きな赤い「治安巡回」という腕章を蒔いている。余所者を極力排除し、外部からの闖入も目を光らせている。直訴村にいた多省からの貧困層を強制的に北京から追い出した。
(7)戦争は「農村から都市へ!」と毛沢東は呼号した
70年代までの革命路線輸出時代には『都市ゲリラ』が合い言葉だった。その都市ゲリラ対策を、毛沢東の後継政権が腐心するようになるとは、歴史のイロニーである。
以上のような視点から北京五輪を観察するのも一興。
杜父魚ブログの全記事・索引リスト(7月26日現在2096本)
2126 北京五輪は準戦争状態 宮崎正弘

コメント