2130 外貨は出て行ってくれ条例 宮崎正弘

入りを制し、出ズルは構わず。五輪の陰に隠れたが、北京はインフレ抑制より外貨流入規制を強化。
日本の新聞は日経いがい大きく扱っていない。まったく紙面にでていないメディアもある(日本経済新聞都内14版は、8月8日付け九面を参照)。
6日、中国は突如として、外貨流入の規制を発表し、しかも即日実施に移した。
AP電(7日付け)によれば「改正の発表はウェブサイトにでただけで、中味の重点は、正式の投資かどうかを当局が判定する。不正な送金などをインボイスで見極め、罰金は従来より三割り増しとする」などとなっているという。
具体的にこれは中国の「外国為替管理条例」で、11年ぶりに改正したのである。
外貨をがむしゃらに獲得するという当初の目的で制定された条例が「外貨は出て行ってくれ」という条例に、あっさりと180度の転換。海外の子会社も利益を外国で運用せよ、という画期的なものである。
外貨準備高が異様にふくれ、世界最大の二兆ドルに近い。
じつは実体経済(つまり貿易黒字)の三倍前後のカネが外国から流れ込んでいた。拙著の多くですでに指摘してきたが、このことに留意したエコノミストが極めて少なかった。これは中国経済を根本から歪ませるだろう、と警告してきた。
外貨は理論上、増えた分だけ国内で相対取引となり、その分が国内に過剰流動性のカネとして流れる。だから株式と不動産、商品市場への投機、はては骨董への投機となる。バブル時代の日本がまさしくそうであった。
中国はインフレ抑制より外貨流入規制に姿勢を変えた。
インフレ抑制のための金利政策が効き目なく、通貨供給量政策が効き目なく、外貨準備は膨らみつづけ、為替は人民元高が唸りを上げて進行していた。
ホットマネー(熱銭という)は中国株と不動産を狙い、つぎに人民元高を狙って一石三鳥の投機だった。だから貿易黒字や直接投資をはるかにしのぐ熱銭がじゃぶじゃぶと中国に流入していた。
この投機資金を制限し、外貨準備高を減らす。「成長の過熱制御」姿勢から、七月末に中央政治局は「安定的で比較的早い経済発展」と軌道を修正していた。
このとき、人民元高はいったん止まると予測できた。実際に7日の相場は人民元安に転じた。
北京五輪開幕のきょう、市場はどう揺れるか?
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