2131 北京の花火見物とグルジア侵攻作戦 古沢襄

ヘソ曲がりかもしれないが、NHKが北京五輪の開会式を熱狂的に中継してくれると、たかが夏祭りの花火風景じゃーないかとテレビのスイッチを切ってしまった。それよりもロシア軍がグルジア軍と本格的な戦闘に入った方が気になる。
案の定、ロイター通信社はロシア軍の戦車がグルジアの南オセチア自治州に侵攻した事件をトップニュースで伝えている。BBCはじめ世界の主なテレビはロシアがグルジア侵攻を開始したことがトップニュースであって、北京五輪のお祭り騒ぎは二番手のお知らせニュースに過ぎない。
第一次世界大戦の頃はバルカン半島がヨーロッパの火薬庫といわれたが、今の世界の火薬庫は中央・西アジアになった。その一角で武力衝突が始まった。ロシアのプーチン首相は「事実上、南オセチアでは戦争が始まった」と認めている。
夏祭りに浮かれている間にグルジアの火の手が広がってしまう危険性がある。その火の手は新疆ウイグル自治区にも波及しかねない。だがロシアは本格介入の構えをみせている。
グルジア政府によるとロシア軍機は首都トビリシに近い軍事施設などへの攻撃も開始したという。こうなると単なる偶発的な武力衝突といえない。
グルジア共和国といっても日本人には馴染みが薄い。西アジア北端、南カフカス地方に位置する国で、地図でみるとカフカス山脈の南麓、黒海の東岸にあたる。北側にロシア、南側にトルコ、アルメニア、アゼルバイジャンと隣接している。
この国はロシアと一定の距離を置き、欧米との関係強化を打ち出してきた。グルジア軍も、NATO側兵器による装備近代化やアメリカ軍などとの共同軍事訓練を行うなどロシアを刺激する反ロ的態度をとってきている。
しかしロシアにとってはカスピ海産原油パイプラインや中央アジア原油利権等と密接な関わりがある。さらにはチェチェン共和国と接するパンキシ渓谷を中心にチェチェンゲリラの巣窟となっているのでグルジアの動きには神経をとがらせてきた。
あえて欧米の反発を承知のうえでロシアがグルジアに侵攻してきたとすれば一波乱が起こる。北京の花火見物などと呑気なことをいってはおれない。
<【モスクワ9日共同】インタファクス通信によると、グルジアからの分離独立を主張する南オセチア自治州に軍事介入したロシア軍は8日、自治州に進攻していたグルジア軍と激しい戦闘を展開。APによると、グルジア側は、ロシア軍機がグルジア軍の3基地と石油輸出用の港湾施設を爆撃したとしている。一方、自治州のココイトイ大統領は親族の報告を基に、グルジアとの戦闘で1400人以上が死亡と主張。(共同)>
<[MEGVREKISI(グルジア)8日 ロイター]グルジアからの分離独立を主張している南オセアチア自治州のプレスサービスは8日、ウェブサイトで、ロシア軍の戦車が州都ツヒンバリ北部に侵入したことを明らかにした。
ロシア側は、同地域をグルジアが制圧しようとする動きに対応したとしている。西側寄りのサーカシビリ・グルジアの大統領は、グルジアとロシアは戦争状態にあると述べた。
米ホワイトハウスによると、北京オリンピックに出席するために中国を訪れているブッシュ米大統領は「グルジア領土保全」を支援することを約束した。
ホワイトハウスのペリノ報道官は声明で「米国はグルジアの領土保全を支援するとともに、即時の停戦を求める」と述べた。
南オセチア自治州のココイトイ大統領がロシアのインタファックス通信に語ったところによれば、グルジアの攻撃で約1400人が死亡した。
グルジアの安全保障当局高官によれば、ロシア機が首都トビリシ近郊の軍事基地を空爆した。内務省によると、グルジア兵3人が死亡した。(ロイター)>
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