相撲の世界で日本人の横綱が出なくなって久しい。それが男子柔道の世界にも及んできた観がある。北京五輪日本選手団主将を務め、五輪柔道史上3人目の2階級制覇を目指した100キロ級の鈴木桂治は1回戦、敗者復活戦とも初戦で無惨にも敗れた。
北京共同によれば、鈴木は試合後に「やり残したことはない。もう一度畳に上がっても(相手に)投げられる」と現役引退を示唆という。
それにしても男子柔道は北京五輪で惨敗を喫した。夕刊フジは「弱い男子柔道4年後どうなる?伝統を重んじすぎたツケ」と嘆いている。国技が泣いている。それだけ日本人は惰弱にドップリ漬かって、衰退化した証なのかもしれない。
<【北京=久保武司】女ばかりが、なぜ強い-。女子柔道70キロ級の決勝が行われ、上野雅恵(29)がアテネ五輪に続きV2を達成した。すでに、メダル獲得数で五輪史上最低が決まっている男子とは対照的に、女子は63キロ級・谷本歩実(27)に続き、上野が連夜の金の舞。エルナンデス(キューバ)を朽ち木倒しで一本勝ちにしたシーンは、日本中のイライラを吹き飛ばした。
日本のお家芸は、完全に女天下に変わった。谷本に続き、70キロ級でも上野が堂々の金メダル。
それに比べて情けないのが男子だ。この日もアテネ銀の90キロ級、泉浩(26)は2回戦でカズシオナクに一本負け。敗者復活戦にも回れず敗退。66キロ級、内柴正人の金でなんとか面目を保っているが、5階級を終えて獲得メダルはその1個だけで、あと2階級を残し、五輪男子柔道史上最低の3個以下が確定した。就任8年目の斉藤仁監督は顔面蒼白(そうはく)。「いつか腹を切らないとな」と辞意を表明しているが、そんなに簡単な問題ではない。
男子が弱いのは、訳がある。日本が伝統を重んじた武術としての「柔道」にこだわりすぎているからだ。投げて、抑えて、一本で勝つことを目指す日本に対し、欧州ではすでに柔道とは言わずに「ジャケット・レスリング」という呼称もある。パワーでポイントを稼ぐ「JUDO」に、日本の男子は完全に制圧されている格好だ。
国際柔道連盟に加盟しているのは199カ国。日本の競技人口は20万人台だが、フランスは60万人を超えている。柔道連盟の関係者は「ジュニアの育成以前に、柔道をやる子供たちが減っている」と頭を抱える状況だ。
重量級で日本が優位を保っているのは「海外の選手で大柄な選手は技のキレがないから、タイトルを辛うじて守っているが、それだって時間の問題かもしれない」と話す関係者もいる。海外では、まだまだ大柄で運動神経豊富な人材は柔道以外の競技を選んでいるから-ということなのだ。
対照的に女子は、谷本、上野が「一本にこだわる」柔道で五輪V2を達成し、このところポイント柔道に徹していた谷亮子は銅メダルに終わった。女子柔道のパワー化は、まだ一本柔道が通用する段階とみていいのかもしれない。しかし、谷本、上野も引退を示唆し、次世代も一本にこだわる柔道で世界と戦えるかは未知数だ。
北京五輪の終了後には、1ポイントを加算される「効果」が廃止される方向にある。それでも、「JUDO化」の大きな流れが変わることはないだろう。大幅な世代交代が予想される4年後のロンドン五輪で、日本発祥の伝統競技は、「JUDO」に取り残される危機にある。(夕刊フジ)>
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2151 相撲も男子柔道もダメ日本 古沢襄

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