中国製ギョーザ中毒事件が、妙なかたちで再燃した。内閣改造・自民党役員人事によって、多少なりとも出てきたかに見えた政権浮揚効果を帳消しにしかねない。
福田首相は消費者保護の拡充強化を政権の重要な柱として位置付けている。にもかかわらず、ギョーザ事件への対応は中国側に配慮しすぎていて、日本の消費者を最優先する姿勢が見えてこない。
この問題は福田政権にとって予想以上のボディーブローとして効いてくるのではないか。民主党などは臨時国会で徹底追及する構えで、「ギョーザ政局」に発展するおそれなしとしない。
これまでの経緯をおさらいしておくと-。問題の「天洋食品」が事件後に回収した冷凍ギョーザによる被害者が中国国内で出たという。これが中国側から伝えられたのが北海道洞爺湖サミット初日の7月7日。「非公表」を条件にしたものだった。
北京五輪開幕直前の今月6日、読売新聞のスクープによって明るみに出た。中国当局も日本側も事実関係をただちに認め、福田首相は「捜査に支障が生ずるということで、公表しなかった」と釈明した。
五輪開会式出席のため訪中した福田首相は、胡錦濤国家主席らとの首脳会談で、この問題を取り上げ善処を求めた。高村外相も訪中、17日に中国側要人と会談し、真相の早期解明で一致した。
この一連の流れを見ると、どうにも釈然としないものが残る。中国当局は当初、中国国内での汚染を否定し、あたかも日本国内の流通過程で有機リン系殺虫剤メタミドホスが混入されたかのような口ぶりだったのだ。
これは「事件」であって歴史認識や領土問題のような政治的見解を異にするたぐいの話とは違う。事件捜査は純粋に事実究明を踏まえて行われるべきものだ。
日本側はそれまで、中国側から「侮られ、罪をなすりつけられていた」といっていい。だが、そのことで中国側を非難することもなければ、国民への丁寧な説明もない。
とかく中国が相手となると腰が引けてしまう外交パワーの欠落が透けてみえる。ギョーザ中毒事件は、日本政治の致命的欠陥を浮き彫りにさせたのではないか。この問題の深刻さは、どうやらそこにある。
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