2173 北朝鮮との核交渉は中断か 古沢襄

韓国の朝鮮日報はワシントンからユニークな記事を送ってくる。米国務省筋に特殊な情報ルートを持っていると思われる。今回も「核問題:米大統領選の影響で足踏み状態」という視点で特集を書いた。さらには六カ国協議の枠組みが、揺らぐ可能性もあると指摘した。
このニュースはワシントンの北朝鮮専門家の発言として、北朝鮮はすでにブッシュ政権との交渉に見切りをつけて、次ぎに政権と交渉する方針を定めたようだと述べた。しかもこの判断は六カ国協議の参加国の間でも共通の認識だとみている。
北朝鮮との交渉で安易な妥協に走り過ぎると米保守派からブッシュ・ライス外交批判が出ているが、北朝鮮側もブッシュ政権との交渉に見切りをつけたとなれば、交渉は事実上、暗礁に乗り上げたことになる。
朝鮮日報はほぼ断定調で報じているが、この可能性が出ていることは否定できない。唯一の得点にしようと無理を重ねてきたブッシュ外交だが、強かな北朝鮮に振り回されている観がある。
<米国の自由アジア放送(RFA)は18日、「北朝鮮は(米国の大統領選挙を前に)ブッシュ政権とは核申告の線で交渉を終わらせ、今後は次の政権と別の解決を模索する方針を定めたようだ」と報じた。
これは「匿名のワシントンの北朝鮮専門家」の発言ということだが、すでに6カ国協議参加国の間でも共通した見方となっている。
つまり「米国のレームダック(政権末期の権力を喪失した状態、死に体)政権による北朝鮮との核交渉は事実上終わった」ということだ。
核問題についての交渉が事実上力を失ったというのは、米国が本格的な大統領選挙の時期に入ったことを念頭に置いている。実際に核問題についての交渉は、北朝鮮が今年5月に提出した核開発プログラムの申告書の検証方法について検討する段階で足踏み状態にある。
◆北朝鮮はブッシュ政権との交渉を終了
米国は今月末に民主党大会、来月初めには共和党大会を通じてそれぞれの大統領候補を正式に選出し、その後は本格的な大統領選挙戦に突入する。ブッシュ政権はまさしくレーイムダックとなるわけだ。
また米政府は大統領選挙期間中に保守派の支持を集めるために、北朝鮮が極度に嫌う人権問題を核問題と連携させようとする発言を何度も行っている。柳明桓(ユ・ミョンファン)外交通商部長官ら韓国政府の関係者が、「8月までには少なくとも3段階の核廃棄に向けたロードマップ(工程表)を作成する必要がある」と何度も強調していたのも、このような状況を予想していたからだ。しかし合意されたロードマップの作成は実現していない。
現在核問題についての交渉は、3段階どころか2段階の仕上げともいえる検証体制の構築でつまずいて進展が見られない。
北朝鮮は先月北京で行われた6カ国協議で検証履行計画書の草案を受け取ったが、1カ月が過ぎた今になっても具体的な回答を出していない。今月14日から16日にかけて米国のソン・キム対北朝鮮交渉特使の訪中をきっかけに、米朝間の実務協議が行われるのではないかと期待されたが、北朝鮮側の担当者はついに姿を見せなかった。
その一方で北朝鮮は18日に朝鮮中央通信を通じ、「米国がテロ支援国指定解除の約束を守らないのは、行動対行動の原則に明らかに反するものだ」と非難した。最近、北朝鮮がこのように米国を公に非難するのも珍しいことだ。
◆韓米、奔走するも成果なし
18日には韓国の黄浚局(ファン・ジュングク)北朝鮮核問題外交企画団長とソン・キム特使が会談を行うなど、韓米・韓日・米中など6カ国協議参加国が状況を打開するためのさまざまな話し合いを行っているが、これといった対策が出てこないのが実状だ。
韓米などは米国の大統領選挙戦が本格化する前に、検証体制構築に向けた非核化実務グループ協議を開催することで一致し、また6カ国外相会談の推進でも一致した。このようなさまざまなレベルでの協議を通じ、両国とも米国での大統領選挙戦の影響で弱まった核問題解決の推進力を高めたいところだ。
しかしこれらすべての計画は、北朝鮮が検証に前向きな反応を示さなければ実行に移すことはできない。
北朝鮮が今後も協力的な態度を示さない場合には、「テロ支援国指定解除の遅延→北朝鮮による寧辺燃料棒の抽出の調整→北朝鮮への経済支援の遅れ」などと続き、6カ国協議の枠組みそのものが揺らぐ可能性もある。
韓国政府関係者は「冷却塔爆破、非公式の6カ国外相会談などを通じて交渉を進めてきたが、検証体制についての米朝間の立場の違いが大きい上に、米国の大統領選挙までが重なって先行きは明るくない」と述べた。(朝鮮日報)>
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