2190 北朝鮮が核無能力化作業中断を発表 古沢襄

北朝鮮は26日、米国のテロ支援国指定解除延期に反発し、寧辺(ヨンビョン)の核施設の無能力化作業中断を発表した。核放棄プロセスは再び停滞する懸念が高まった。
北朝鮮がブッシュ政権との交渉を中断するという観測は、この10日間に急速に生まれていた。22日に韓国の朝鮮日報がワシントンの北朝鮮専門家の発言として、北朝鮮はすでにブッシュ政権との交渉に見切りをつけて、次ぎに政権と交渉する方針を定めたようだと報じた。
これに先立つ18日には米国の自由アジア放送(RFA)が「北朝鮮は(米国の大統領選挙を前に)ブッシュ政権とは核申告の線で交渉を終わらせ、今後は次の政権と別の解決を模索する方針を定めたようだ」と報じていた。
北朝鮮との核交渉については韓国マスコミのワシントン特派員の取材が目立っている。米国のテロ支援国指定解除を無期延期する観測記事も韓国メデイアが先んじていた。
日本のメデイアは慎重なスタンスをとっている。北朝鮮の寧辺核施設の無能力化作業中断は、瀬戸際外交をとる北朝鮮の駆け引きとみている。米朝ともに核交渉の決裂は望んでいないという判断が根底にある様だ。
そんな目でワシントン情報をウオッチしておく必要がありそうだ。韓国の中央日報と朝鮮日報のワシントン情報は面白い。
<北朝鮮へのテロ支援国家指定解除をめぐる朝米間の対立は、核関連施設の検証についての隔たりから始まる。
朝米は検証に入る前の具体的な方法と対象を明記する検証履行計画書(プロトコル)の作成をめぐってこれまで駆け引きを続けてきた。北朝鮮は「現段階の検証対象は寧辺(ニョンビョン)の核施設に限る」という立場を堅持している。
しかし米国は寧辺の原子炉と周辺施設だけでなく、核実験場など核関連施設はいずれも例外なく検証すべきだという原則を強調してきた。ウラン濃縮と核拡散活動も広い意味から検証対象になり、これを文書で保証しなければならない、というのが米国側の立場だった。
高度な検証ノウハウを備えた国際原子力機関(IAEA)メンバーを査察団に含める問題についても北朝鮮は拒否感が強い。核施設内にある物質の試料採取などに対しても北朝鮮は「受け入れられない」という姿勢だった。
北朝鮮はこの日発表した核無能力化中断の声明で「家宅捜索を考えたならば誤算だ」という表現まで使い、検証を求める米国を強く批判した。北朝鮮の本音は、核廃棄プロセスを細かく分けて、段階ごとに最大限の補償を獲得しつつ、核施設への検証は最終段階で決着付けよう、というものとみられる。
これに対し「明らかで、確実な核検証体制を作らねば見返りは与えられない」という米国の立場が衝突し、意見の隔たりが発生してきた。
◇使い済み燃料棒の6割を取り出す=昨年10月3日の6カ国協議合意によって北朝鮮は寧辺の5メガワット実験用原子炉、放射化学実験室(再処理施設)、核燃料棒製造工場など寧辺所在の核施設に対する11の無能力化措置に着手した。このうち8つの措置が完了し▽原子炉内の「使い済み燃料棒」の取り出し▽未使用燃料棒の処理▽原子炉制御棒駆動装置の除去--の3つは進行中かまだ開始していない段階だ。
使い済み燃料棒の場合、北朝鮮が「6カ国協議関係国5カ国の北朝鮮へのエネルギー支援が遅れている」という理由を挙げ、今年初め、取り出す速度を落とし、現在8000個余のうち約6割にあたるおよそ4800個の燃料棒だけが取り出された。
未使用燃料棒をどのように処理するのかをめぐっては、6カ国関係諸国が実務協議を行っている。制御棒駆動装置の除去は、使い済み燃料棒の取り出しが終了した後、可能になる。
北朝鮮が26日に触れた「原状復旧」措置が当面は容易ではないものとみられる。使い済み燃料棒の取り出しは中断されても、原子炉を再稼働するためには施設の再整備と冷却塔の復旧などといった実務作業が必要とされるからだ。 (中央日報)>
<北朝鮮が26日、核問題で再びがけっぷち戦略を持ち出してきた。米国によるテロ支援国指定解除の遅延を理由として、寧辺の核施設無能力化の措置を中断し、すでに無能力化された施設についても原状回復まで考慮に入れると言い出してきた。北京五輪が終了すれば北朝鮮が何らかの手段を講じてくるのでは、という見方が的中したのだ。
しかし韓国政府の当局者や専門家たちは控えめではあるが、「状況が破局へと向かうことはないだろう」との見方を示している。
一部では「要するに北朝鮮としてはブッシュ政権に対する期待はこの程度にして、米国の新しい政権を相手にしたいという意思表示ではないのか」という見方もある。米国や韓国の政権交代ごとに危機的な状況をつくり上げておき、その上で双方の新政府と勝負に出るという「悪い癖」が再び出てきたということだ。
◆北朝鮮の行動の背景
北朝鮮はこの日の声明で、「自分たちは10・3合意に沿って核申告書を提出したが、米国がその代償として約束したテロ支援国指定解除を行おうとしない」と主張している。議会への通知期間も終了し、米国政府は今月11日に北朝鮮をテロ支援国リストから削除できることになっていた。
北朝鮮は今年6月、過去における自国の核活動についても記載したという申告書を提出した。しかし米国国内では、ヒル国務次官補ら北朝鮮との交渉担当者が簡単に北朝鮮を信じてテロ支援国指定解除などを約束したという強硬論が力を得たことから、米国は北朝鮮が提出した申告書の内容を確認するという検証問題を取り上げてきた。
北朝鮮としては今回は申告だけを行い、検証は「韓半島(朝鮮半島)非核化」という最終段階で、南北朝鮮が同時に行うべきという主張を曲げなかった。一方の米国は「申告と検証は一つのセットだ」として、プルトニウムやウラン濃縮、核拡散の問題などに対する検証を確実に行うべきとして、北朝鮮に圧力を加えている。
北朝鮮は当初約束していた11の無能力化措置のうち、「使用済み核燃料の抽出」「未使用燃料棒の処理」「原子炉制御棒駆動装置の除去」の三つはまだ終了していない。韓国政府の関係者は「北朝鮮は8000本の使用済み核燃料棒の中から、1日におよそ30本ずつ合計4800本以上を抽出したが、今月14日以降はこの作業を中断している」と明らかにした。(朝鮮日報)>
<パレスチナを訪問中のライス米国務長官は26日、「北朝鮮にはまだ守らなければならない義務がある。向こう数週間でどうなるか見守っていく」と述べた、とAP通信が報じた。また「米国は最近の6カ国協議でも、北朝鮮の無能力化をめぐる発表について正確に検証する装置を待っているとの点を、極めて明確に伝えた」という。
ホワイトハウスのペリノ報道官は「(米国は)北朝鮮が検証の約束を守るとき、テロ支援国家の名簿から北朝鮮を削除するとすでに伝えてある」と、検証を受け入れるよう要求した。
米国務省は「北朝鮮の措置は6カ国協議での合意を後退させるものであり、約束に違反するもの」とした。また、ウッド報道官は「北朝鮮がテロ支援国家から指定解除されたければ、まず核検証システムを準備しなければならない」と強調した。
国務省のある関係者は「北朝鮮は検証を理由に、米国が次期政府に変わるのを待とうと考えているようだ」と話した。つまり「北朝鮮は米国を刺激するためにミサイル発射のような挑発的な行為に出ることもできるが、そうしてみたところで得るものがないため、11月の米大統領選挙までは何もしないで待つのだろう」との指摘だ。
6カ国協議の議長国である中国は「困難な問題が発生すればするほど、今後も6カ国協議を進めていくべきだ」と主張した。外交部の秦剛報道官は「6カ国協議はとても複雑な過程」とし、このように述べた。
また「6カ国協議の参加国は、韓半島(朝鮮半島)の非核化と北東アジアの平和や安定という大局を踏まえ、各自が承認したものなどを明確にし、会談が進むよう協力していかなければならない」と話した。(朝鮮日報)>
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