福田首相は退陣表明をやってから、「ひきこもり」状態になってしまったらしい。
これでは困る。辞意を表明しただけであって、自民党総裁選で次期総裁がきまり、国会での指名選挙を経て新首相が誕生するまで、福田さんは日本国総理大臣なのだ。あと20日ちょっとだ。
毎日行ってきたテレビカメラを前にしてのミニ・インタビュー(業界用語でぶら下がりという)もやめてしまった。
さらに、3日には自衛隊の高級幹部会同への出席を取りやめ、代理も出さなかったという。これはだめだ。
高級幹部会同は全国の自衛隊幹部が年に1回、集合して、最高指揮官である首相が訓示を行う場だ。これに首相がドタキャンするというのでは、自衛隊を中心とする日本の安全保障体制そのものに、重大な懸念を生じさせてしまう。
もしかすると、首相は自衛隊の最高指揮官であって、万一の事態が起きた場合、最終的な決断をくだす(はっきりいえば、「開戦」の決断だ)立場にあるということを、忘れてしまったのかもしれない。
アメリカ大統領は「核のボタン」を持っているから、その権限に空白が生じることは許されない。大統領に万一のことがあれば、副大統領(上院議長)、下院議長・・・と継承順が決まっている。
ちょっとした手術で麻酔を使う場合でも、一時的に権限を副大統領に移管する。大統領の意識が失われることによって、その権限に切れ目があってはならないのだ。
年に一度の一般教書演説のさいは、継承順のなかの閣僚の1人が必ずほかの場所にいることになっている。大統領以下、全員が集結し、そこがテロ攻撃にあって、全員死亡という事態を想定してのことだ。最低1人だけは大統領継承順位にあるものを隔離しておくのである。
たとえで使うのはよくないかもしれないが、昔、巨人軍は王と長島を同じ飛行機には乗せなかったという。感覚としては、これと同じだ。
内閣総理大臣の重みに耐えられないというのであれば、官房長官を首相代理にすればいい。首相の権限は継続して担保されることになる。
福田首相の現在の立場は、次期政権誕生までの空白をいかに支障なく進行させるか、ということにある。政治的にいえば、自分の後継者をつくる自民党総裁選を万全のかたちで展開させることを支援しなくてはいけない。
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