馬脚をあらわし始めた馬英九政権は危険な綱渡り。アモイと金門に橋を架けるプロジェクトへ急傾斜、自主ミサイル開発を凍結。
中国時報(9月1日)は馬英九総統が、台湾で自主開発中の巡航ミサイル「雄風2E型」を凍結すると決定したと報じた。
このミサイルは上海を射程内とする中距離巡航ミサイル(蛇足ながら、台湾はかつて自主開発の「経国号」(ジェット戦闘機)を推進していたが、途中で開発をうやむやにした。数機が実戦配備されたが、役に立つ代物ではなく、李登輝政権になって米国からF16ジェット戦闘機,フランスから「ミラージュ」戦闘機を輸入する防空体制に切り替えた)。
馬はミサイル開発凍結を、「中台関係改善を進めるための『善意』の表現」と比喩したそうな。(そこまでして北京に媚びる外省人政権というのはいったい何なのだろう?)。
野党・民進党は直ちに抗議声明を出し、「(中台間の)軍事バランスを台湾側から崩し、これでは北京との交渉カードを失うではないか」と馬英九の軍事方針変更を批判した。
(ただし一言だけ私見をのべると台湾の『自主開発』なるものは金ばかり食って、軍と政治家の汚職の温床とされるうえ、機密が北京へ漏れるので、率直に言って米国製を買う方が効果的ではありますが)。
馬脚が現れたのは、そればかりではなかった。
9月3日、馬はメキシコのメディアと会見し、「台湾と中国は“二つの中国”関係ではない」とし、明確に李登輝路線を否定した。馬の計算は、これで北京を安心されるのではなく、ワシントン向けの発言であろう。
馬総統は、「両岸(中台)は一種の特別な関係で、国と国の関係ではない。この点が大変重要だ」とメキシコ紙に語り、「1992年に(中台)双方は一つの中国の原則を受け入れた。ただし『一つの中国』の解釈は異なるが」と付け加えた。
両岸関係基金会の江丙伸理事長は先月(8月下旬)に来日し、読売新聞などと会見したおりに「馬英九政権の外交政策について「対中傾斜と言われるのは心外。日本との関係も強化したい」と述べた」(読売新聞)。
▲金門島から対岸のアモイへ架橋します
これらの伏線があって馬英九は金門島を訪問した際に「金門からアモイへ橋を架ける夢のプロジェクトを実現したい」と述べ、金門島経済の活性化のみならず、台湾本島と中国大陸との直接的なアクセスを前向きにみていることが判明した。
(これも蛇足ながら金門―アモイへの架橋は、金門島の李知事(新党)が数年前から本気で取り組んできたプロジェクト。小生が金門知事とインタビューした際に『相手がミサイルでねらっているのに。何故?』と糺すと、『我々はおなじ中国人、相手はそんなことをしないさ』と歯牙にもかけていない様子で驚かされた)。
(金門とアモイをつなげば人民解放軍は侵略軍を、台湾の費用でかけて橋を渡って攻め込んでくるのに?)
こうした動きに対して台湾庶民は抗議の姿勢を見せており、先月30日には台北市内で「馬英九政権を批判するデモ」が行われた。
大規模なデモは30万人が参加した。多くは馬脚を現した馬政権への失望で、とくに「台湾経済の再生を公約して当選したが、ガソリン、食品のインフレがすさまじく生活を圧迫しているからである。
馬政権の支持率は迅速に低下しており、国民党系のメディアの世論調査でも50%を切っている。
ところで、台湾の世論は、次期「麻生政権」を歓迎している。麻生は馬英九や台湾国会議長の王金平とも会見している。
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