2268 民主党は意外と危機的状況にある 阿比留瑠比

いよいよ自民党総裁選がきょう告示され、次期首相の座をかけた激しい舌戦が繰り広げられます。昨年の総裁選が福田、麻生両氏の2人だけの戦いだったのに対し、今回は5人が届け出るにぎやかなものになりましたね。前回は福田氏が、ほとんどまともな政策も打ち出さないうちに、ナベツネ氏主導で派閥の論理で「当確」となってしまいましたが、今回はぜひ、各候補がそれぞれの政策を主張し、国家観をぶつけ合うような総裁選にしてもらいたいものです。
さて、この自民党のお祭り騒ぎの陰に埋没してしまいそうなのが民主党ですね。8日には小沢一郎代表が無投票でひっそりと代表に3選され、新聞各紙もそれなりのスペースを割いて報じていましたが、それも一日だけで、メディアの関心は当面は自民党内の動きに集中しています。まあ、せっかく野田佳彦氏が出たいというのに、よってたかって止めて、面白くもない無投票選挙にしてしまったのですから、自業自得とも言えますが、過ぎたことは仕方がありません。それよりも民主党は今、もっと危機感を持つべきことがあるように感じています。
それは、最近の各種世論調査に表れている小沢代表の不人気ぶりです。長い政治家生活の中で、何度も失敗を繰り返し、そのたびに今度こそ少しは大人しくなるだろうと思っていたら、熱心な支持者やメディアが喧伝する「小沢神話」「虚像」に助けられて復活してきた小沢氏ですが、まさに政権をとり、首相になるというビジョンが現実のものになろうとしている現在になっても、あまり人気が出ていません。国民も、もうこの人にかき回されるのはうんざりだと思い始めているのか…。
今朝の毎日新聞1面の世論調査結果を見ると、「誰が首相にふさわしいと思うか」との質問に、麻生太郎・自民党幹事長が23%なのに対し、小沢氏はわずか7%にとどまっていました。新首相誕生後にはすぐ解散・総選挙が予想されていますから、この人気の差は民主党にとって痛いはずです。毎日はさらに5面で「小沢代表不人気 『評価しない』72%」という関連記事も載せていました。
それによると、小沢氏への評価は「評価しない」が72%に上り、「評価する」は22%にとどまっています。これは、大半の人が小沢氏はダメだと判断していることを意味していると言えます。民主党支持層でも「評価しない」が39%とほぼ4割に達しており、小沢氏への不信感が民主党支持者の中でも確実に浸透している様子がうかがえますね。まあ、これも当然だと思いますが。
同様の世論調査は他紙も実施しており、9日の読売新聞朝刊1面では、「首相にふさわしい人」は麻生氏が30.6%で、小沢氏は9.6%。ここでもダブルスコアどころか3倍以上の差をつけられています。また、4日の朝日新聞1面に掲載された調査では、「次の首相には誰がよいと思うか」との質問に、麻生氏30%、小沢氏8%という結果が出ています。福田首相が1日の辞任表明記者会見でうらみつらみを述べた小沢民主党の「何でも対決姿勢」が、さすがに1年も続くと国民に「いくら何でもやりすぎだろう」と思われてきたということでしょうか。
朝日の関連記事によると、麻生氏は民主党支持層からも小沢氏と並ぶ25%の支持を得たとあります。ここからも、民主党支持者が、小沢氏やその政治手法を必ずしも「よし」としていないことが分かりますね。政治評論家の屋山太郎氏は「麻生対小沢の対決になれば、陽対陰の対決になる。福田だったら陰対陰で面白くもないが、陽対陰の構図となれば自民党もいい勝負となる」と語っていましたが、実際、そういう部分はあるのでしょうね。政治をイメージや印象で片づけるのはよくないと思いますが、かといって、できるならば明るい気持ちでいたいものですし。
民主党の執行部は、なぜか小沢氏が代表でなければダメだという思い込みがあるようで、小沢氏が国会をさぼろうが、自党を批判しようが奇矯な言動をとろうが、必死になってかばってきましたが、もっと現状に危機感を持った方がいいのではないでしょうか。いまさら代表戦をやり直すことはできないにしても、民主党支持者を含む国民の側がそういう繰り返される構図に飽き飽きしてきたということを、もっと意識したほうがいいように思います。福田氏といったんは大連立で合意し、党に持ち帰って反対されるとへそを曲げて辞任だと言いだし、挙げ句慰留されるとそのまま代表に居座ったあの無様な代表の姿は、まだ記憶に新しいですしね。
それにしても、政界の人材不足は深刻です。私は今年1月、福田氏と小沢氏が初の党首討論を行い、年金問題について議論しているのを聞いた際、これは本当に「茶番劇」だと感じました。そんなに前の話でもない2004年5月、年金未納・未加入問題をめぐって自らの年金未納をなかなか認めず、結局は官房長官を辞任することになった福田氏と、同じく年金未加入で、就任要請をいったん受諾していた民主党代表の座を辞退した小沢氏が、自分たちの過去については一切触れずにしかめつらしい顔をして年金問題を論じているのですから。
まあ、その一方の当事者である福田氏が首相を辞めるのは慶賀の至りですが、もう一人は相変わらず「国民生活が第一」と似合わないセリフを口にしながら、政治の「主役」であり続けようと頑張っています。細川連立政権に始まり、新進党、自由党…とかかわったものをぶち壊し続け、側近たちに離反され続け、なぜか関連政治団体に資産をため続けてきたこの人に、まだしがみつき、頼らないといけないとしたら、何という人材の枯渇でしょうか。もちろん、選挙は党首の顔だけで戦うものではありませんが、かといって党首の顔が結果に大きく影響してくることもまた事実でしょう。
とりとめのない話になってしまいましたが、少し流れが変わってきたかなと思ったので、このエントリを書いてみました。私は福田氏の辞任表明までは、次期衆院選では民主党が勝って政権をとるのだろうと予想していたのですが、そうでもなさそうだと思い直しました。民主党は今度の選挙で躍進できなかった場合、崩壊への道をたどることになるでしょう。逆に、現在は体中にチューブをつながれ、無理矢理延命しているだけのように見える自民党は、息を吹き返すかもしれません。政界一寸先は闇だというよく使われる言葉が、また新たな重みを持って感じられるのです。
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