日本の政局よりも北朝鮮情勢の方が気になる。あるいはニューヨーク発の金融不安が世界にどう広がるのだろうか、この方が心配である。戦後政治でもっとも優れた官房副長官だった石原信雄氏は、世界の大きな流れの中で日本の”政治空白”の影響が心配だと言う。
この”政治空白”の意味は、島国の日本でコップの中の政争に明け暮れていて、世界の激流に気がつかないことを言っているのだろう。
1994年4月に細川首相が辞意を表明して、羽田内閣ができるまで約20日間のブランクが生じた時に、石原氏は内閣官房副長官の職にあった。この時にクリントン米大統領は、北朝鮮と一戦を交えるギリギリの選択に立たされていた。
日本海には米第7艦隊の空母など約100隻の艦艇が集結し、韓国は臨戦態勢に入った。ドン・オーバードファーの「THE TWO KOREAS」は、その緊迫した状況を伝えている。まさに「日本海の波高し」だった。
だが日本の政治家たちは政争一色。石原氏は誰にも相談することはできない。「本当に困った」と述懐する。官僚のトップの座にある石原官房副長官は、自分たちだけで出来ることをやろうと覚悟を決めた。
あれから14年の歳月が経って、日本の周辺で同じような緊張状態が生まれている。政治家たちは「選挙!選挙」で心が定まらない。最近は韓国の新聞に目を通すようにしている。日本よりも遙かに危機意識が高い。次の情報は大いに参考になる。
<北朝鮮の朝鮮労働党元書記で、韓国へ亡命したファン・ジャンヨプ氏(85)は、「韓国と中国が自由貿易協定(FTA)を締結すれば、(北朝鮮の情勢が急変した場合に)中国が無理な介入をすることはないだろう」と話していたことが16日明らかになった。
ファン元書記は今月12日、李哲承(イ・チョルスン)憲政会長、朴寬用(パク・グァンヨン)元国会議長、延世大のキム・ドンギル名誉教授、北朝鮮民主化フォーラムのイ・ドンボク代表らとの夕食の席で、「中国は経済的な利益を重視する」として、冒頭のように述べた、とある参加者が伝えた。
ファン元書記はその上で、「北朝鮮の問題については、中国がすべてのカギを握っている。韓中FTAを締結することにより、両国の距離が縮まれば、北朝鮮を(中国式の)改革・開放に導くことも可能だ」と語ったという。
また、金正日(キム・ジョンイル)総書記の身にもしものことがあった場合、北朝鮮がどうなるかについて、ファン元書記は「(金総書記の長男の)金正男(キム・ジョンナム)氏が権力を継承する可能性が高い。
中国政府が金正男氏を常に管理してきており、(金総書記の義弟の)張成沢(チャン・ソンテク)労働党行政部長が彼を支援しているからだ」と述べたという。張成沢氏は2004年5月、金総書記ににらまれ追放されたが、06年に復帰し、国家安全保衛部や保安省、検察といった北朝鮮の権力組織を統括している。
一方、ファン元書記は、金総書記の身にもしものことがあった場合の北朝鮮の政権について、「権力者の偶像化」という作業が必要ないため、中国式の改革・解放を行うことができ、時間がたてば政治的な民主化も自然に実現するのではないか、という見通しを示したという。だが、この過程で韓国や米国が過度な介入をすれば、中国の反発といった副作用が懸念される、としている。
また、ファン元書記は「金総書記が亡くなっても、側近らがすでに権力を継承する体制を構築しているため、内乱や無政府状態に陥ることはないだろう」と語った。その上で「もし無政府状態に陥ったならば、中国軍が駐屯する可能性は100パーセントだ。米軍や韓国軍も北朝鮮へ入り、多国籍軍として北朝鮮を管理していかなければならない」と述べたという。(朝鮮日報)>
杜父魚ブログの全記事・索引リスト(9月2日現在2233本)
2302 金正男が権力を継承する可能性 古沢襄

コメント