2314 大不況の足音(その2) 宮崎正弘

世界通貨体制は破綻へ至るのか、世銀IMFは機能不全に陥る。アメリカの衰退、ドル本意の衰弱、モラルハザードの諸問題。
昨年頃からグリーンスパン前FRB議長は「信用の劇的な収縮がおこるだろう」と警告してきた。
グリーンスパンの警告は主として中国のバブル経済に向けられた発言だった。
だがサブプライム危機を、一昨年から警告してきた人物がいる。
世界一の投機家といわれるジョージ・ソロスである。
ドル決済システムの衰退、ドル本位制の部分的な崩落や原油高、異常な金の高騰をああだこうだとエコノミスト達がさえずっていた頃、ジョージ・ソロスは悪性な問題の所在を的確に突いていた。
ソロスの所論は、なぜか主要な経済新聞とか『週刊ダイヤモンド』『週刊東洋経済』という雑誌ではなく、言ってみれば経済理論誌とはかけ離れた『週刊現代』に掲載された。
つまり返せるか返せないかもわからない人に住宅ローンを貸し付け、最初は低利の魅力だが、いずれ雇用を失ったり、賃金が下がったり、反対に金利があがったりすれば、個人の債務不履行が生じる。景気が右肩上がりの時は、強気でごまかせても、いったん経済が不調になればクレジットカード破産が目立つように住宅ローンは不払いが急増するだろう。
その債務は、ドル急落とか、株式の急落よりも桁違いのスケールであり、これが一気に爆発するおそれが高いとソロスは早くから警告してきた。
米国政権やウォール街の思惑とは逆のことをいうので、ソロスの警告は無視されがち、しかもアカデミズムの世界は、ソロスを虫けらのように嫌った。
リーマン・ブラザーズもメリルリンチも、ソロスの警告を無視して強気のビジネスを展開した。ファニーメイもフレディマックも、安泰安泰、役員も従業員ものんびりとしていた。
コンピュータと金融工学の発展により、住宅債券は、デリバティブによって次々と転売されており、最終的に誰がもっているのか、わからない状況が2007年8月まで続いていた。
その総額は邦貨500兆円から1000兆円と見積もられた。
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