本当にやってきたのか、日本の出番?三菱UFJ銀行がモルガンスタンレーの筆頭株主に。
麻生太郎が自民党の新総裁に選出されたという記事で日本の新聞は覆われている。ところが、麻生総裁誕生のニュースは世界のマスコミでは片隅に扱われているに過ぎない。
一面トップはなにか。
「三菱UFJ銀行がモルガンスタンレーの筆頭株主に」である。
バブル時代のおわりに邦銀は一斉に本場アメリカへ打って出た。
住友銀行はゴールドマンサックスに五億ドルを出資して「共同参画」した。富士銀行はヘラー・フィナンシャルへ。第一勧業銀行はCITグループへ。
大和銀行は投機的行為に失敗して撤退、ゴールドマンサックスに救援融資した住友銀行は、その後、三井と合併して長らえ、三和はカリフォルニアでリティル(窓口業務)を広げたが、本国で存在が難しくなって合併された。
いま、米国に残っているのは三菱UFJ系列のカリフォルニアの銀行のみ。
ウォール街の未曾有の危機に多くが断末魔の叫び声、投資銀行が活躍した“資金運用資本主義”の時代は終わり、商業銀行の本道に復帰する道筋が見えた。まえにも書いたようにグラススティーガル法の復活である。
また異変が起きた。
モルガンスタンレーから救援のための第三者割り当て増資の依頼は、三菱UFJ幹部に19日に届いた。決断が22日。わずか四日で9000億円もの支援、実質的にはモルガンスタンレーの筆頭株主になる。
昨年、モルガンは、中国に出資を依頼して50億ドル(5500億円)をポケットにしたばかり。内情は当時から火の車だったのである。
だが、この四日間という即断即決が三菱UFJ銀行の幹部だけで決断したとは、とうてい思えない。ワシントンから東京の財務省へ懇請のうめきが、聞こえてきそうではないか。
つい先々週、三菱はリーマンの増資要請を謝絶したばかりである。
アメリカ人の心情から言えば、日本の出資は「ホワイトナイトの出現」ではなく、「火事場泥棒」のたぐい、そもそも日本人とアメリカ人は銀行業務においてさえ、マナーも違えば、文化的乖離が往々にして社内マネジメントを大きく揺らす。
同日、野村證券は香港に拠点のリーマンブラザーズ「アジア部門」の買収で合意した。つぎにゴールドマンサックスへの救援増資に三井住友フィナンシャルグループが応じる気配濃厚である。はたしてこれら日本勢の躍進は、吉と出るか凶と出るか?
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2326 吉と出るか凶と出るか? 宮崎正弘
宮崎正弘
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