2337 小泉引退にチルドレン・ショック 古沢襄

<自民党の小泉純一郎元首相が25日、次期衆院選に出馬せず今期限りで政界引退する意向を地元の神奈川県横須賀市の関係者に伝えたことが分かった。次男進次郎氏(27)を後継候補とする方向だ。小泉氏は首相在任中に郵政民営化などの構造改革路線を推進。北朝鮮を電撃訪問し拉致被害者の帰国を実現した。01年の自民党総裁選で圧勝し、首相に就任。世論調査で高支持率を記録して、長期政権を維持した。(共同)>
引き際もサプライズ。如何にも小泉さんらしい。自民党の期待を担ってスタートした麻生内閣の顔ぶれをみると、中曽根外相の起用、野田消費者行政担当相の留任など小泉改革路線が大きく後退した感が否めない。
小泉さんが後押しした小池百合子元防衛相には地方票が一票も入らなかった。自民党の地方組織も”改革”よりも”景気回復”を求めている。
小泉改革路線は明らかに後退局面を迎えた。改革を支持する声は依然としてあるのだが、改革に伴う格差拡大など痛みのキシミ音が高まっている。
それでも小泉さんは改革の継続を唱えていた。来るべき総選挙で小沢民主党に勝てるのは初の女性首相となる小池自民党の選択しかないと訴えた。独特の政治的なカンを誇る小泉劇場の指揮者の言うことが届かない自民党になっていた。
さて小泉放れをみせた麻生政権は、自民党内の圧倒的な支持を獲得したが、国民的な支持はいま一つというところだ。マスコミ各社の世論調査が出揃ったが、麻生内閣の支持率は発足時の安倍政権(71%)、福田政権(59%)にも届かない。辛うじて政党支持率で民主党を上回った程度である。
このまま解散・総選挙に突っ込んでいったら、まさに与野党伯仲の選挙になるのではないか。それはまた小泉チルドレンにとっても厳しい選挙戦になる。引退するとはいえ小泉人気は依然として高い。総選挙では小泉さんは小泉チルドレンの応援に汗をかくつもりでいるのではないか。
<小泉純一郎元首相の議員引退表明は25日、政界に複雑な反応を広げた。在任中、強力なリーダーシップで国際的に高く評価されながら、国内では抵抗や批判が絶えなかった政治家の功罪は、容易に定まりそうもない。
「欧米志向で、個人の好みを政治・外交にストレートに出した珍しい首相だった」かつて盟友だった自民党の加藤紘一元幹事長は、小泉政治の特質を外交に見いだす。
日米蜜月関係は、ブッシュ米大統領との個人的親交が基だった。北朝鮮から拉致被害者を初めて救出したのも、電撃訪朝で金正日(キムジョンイル)総書記と直談判したからだ。個人の資質が国際舞台で通用した戦後まれな首相だった。
一方で、加藤氏は小泉首相の靖国神社参拝を「日中関係に大きな傷跡を残した。外交関係者の必死の努力で関係は修復されたが、政治家の行動一つが両国関係を大きく傷つけることになる事例となった」とも批判する。
欧米各国では今も「コイズミ・リフォーム(構造改革)」への評価は高い。世界金融危機の中、日本の銀行・証券会社が米大手投資銀行に出資するほど体力を回復したのは、小泉時代の不良債権処理など荒療治の成果だ。
しかし、国内で構造改革の評判は悪い。25日夜、小泉氏から電話で連絡を受けた森喜朗元首相は「特に驚かなかった。小泉改革の功の部分は、もう少し時間をかけないと分からない。今は罪の方が出ている」と指摘した。
森氏は改革による都市と地方の格差拡大を批判。今回の総裁選でも改革見直しの麻生太郎首相を支持し、改革継続を唱えた小池百合子元防衛相支持の小泉氏と対応が割れた。
一方、小泉氏と共に小池氏を応援した中川秀直元幹事長は「これからも連携しながら改革派として頑張りたい」と語ったが、落胆の色は隠せなかった。
郵政民営化法案に造反し自民党を離党した国民新党の亀井久興幹事長は「選挙で小泉路線が国民に否定されるのを、自分の目で見るのが嫌になったのではないか」と酷評した。(毎日)>
<小泉純一郎元首相は25日夜、「27日の講演会の話」という名目で地元・神奈川県横須賀市の事務所に支持する県議らを集め、いきなり「政治家としての役割は終えた」と引退を切り出したという。30分後に事務所から出た元首相は車に乗り込み、報道陣から「引退するのですか」と問われると、うんうんと何度もうなずいた。
元首相を支持し、05年の郵政選挙で当選した「小泉チルドレン」は突然の引退表明に驚きを隠せない様子だ。
武部勤・元自民党幹事長の秘書から転身した篠田陽介衆院議員(35)=比例東海=は「恩人で、政治姿勢にも共鳴し、目標にしていた政治家。寂しいの一言。最後まで驚かせる人ですね」と話した。
04年の新潟県中越地震当時の旧山古志村長、長島忠美衆院議員(57)=比例北陸信越=は、県内を車で移動中に引退のニュースを聞いた。「唐突なところが小泉さんらしい。若手には影響力があるので残念だが、政治には潔さも必要。チルドレンから自立して恩返しできれば」と語った。
郵政民営化に反対した野田聖子消費者担当相の地元・岐阜1区に「刺客」として送り込まれた佐藤ゆかり衆院議員(47)=比例東海=は「あっぱれという思いだ。今後も広い意味で政治家として活躍し、アドバイスして欲しい」と話した。片山さつき衆院議員(49)=静岡7区=は「本人と話していない」とコメントを避けた。
前回の郵政選挙で初当選した杉田元司衆院議員(57)=比例東海=は「思い出に残っているのは総理を辞められた後、1年生議員6、7人で高輪のラーメン屋で一杯やったこと。拉致被害者を北朝鮮に戻さないと決断した時、『いろんな人に一度だけ話を聞いて決断する。二度聞くと迷いが生じるから』と話したこと」と語った。
一方、小泉改革で窮地に陥った人たちの見解は辛らつだ。
公共工事削減の影響で06年、神戸市内で経営していた土木工事会社が倒産した市内の男性(61)は「家も何もかもなくした。経営者の仲間も2、3人自殺した。『痛みに耐えろ』とだけ言って投げ出すのは許せない」と今も憤る。
派遣労働者の労働条件改善などに取り組む派遣ユニオンの関根秀一郎書記長(44)は「小泉改革の規制緩和が雇用に残したつめ跡は非常に大きい。日雇い派遣労働者など使い捨てとも言える雇用を許し、ワーキングプアを増大させた。前回衆院選の時、若年労働者は小泉元首相のワンフレーズに期待した。しかし、今彼らは最大の被害者だ」と批判した。
午後7時半すぎ、東京都千代田区のゆうちょ銀本店で開かれていた店長会議を終えて出てきた男性店長(55)は「小泉元首相は郵政3事業を放り投げたまま、その後の方向性を示さなかった」とため息をついた。
◇猪瀬さんエール「今後も自由に」
小泉政権で道路関係4公団民営化推進委員会委員を務めた東京都の猪瀬直樹副知事は25日、小泉首相の政界引退に「権力に執着のない小泉さんらしい直感的な判断でやめた感じがする」と語った。
構造改革路線の後退も懸念されるだけに「改革の火種をうまく次の人たちにつなげる役割は残しておいてほしかった」と惜しむ。今後の小泉氏の活動については「改革の象徴としての小泉さんは存在していい。バッジがなくても、もっと純化して自由に発言してほしい」と期待した。
また、小泉氏と遠縁でもある石原慎太郎知事は「彼らしくていいじゃないですか、さっぱりしていて。人材はたくさんいるんだから、どんどん新陳代謝していったらいい」と引き際をたたえた。(毎日)
       
杜父魚ブログの全記事・索引リスト(9月20日現在2333本)

コメント

タイトルとURLをコピーしました