偽REITやら高金利住宅投資ファンドやら一斉に破綻へ。深せん84%、上海69%、北京63%もの住宅販売大下落。
広東省の深せんは人口800万人。中国で一番最低賃金が高い(月1000元=邦貨16000円)。
広州市は昨年に「一万ドル倶楽部」(米ドル=邦貨160万円)入りし、女中さんはフィリピンから大量に雇用している。これらの事実はすでに拙著でも書いた。
広州市民一人あたりのGDP10000ドル? 日本のネット・カフェやビデオ店で生活する貧乏な若者よりも収入が多いではないか!
統計が怪しいとはいえ、実際に広州市を歩くと、その豊かなこと! 筆者がよく宿る花園飯店は値上げしても予約を裁ききれない状態が続いた(ひとりあたりのGDP統計は、広州に戸籍のある人を分母に総収入を割った数字で、流入した無戸籍、労働者を参入していなかったのだが)。
異変は華南から起きた。革命が華南から起きるように。
不動産価格の暴落は予測された事態とはいえ、中国の場合は、「暴力的」に訪れる。すぐに噂が広がり、携帯電話で人が集まり、暴動に発展し、夥しい死傷者がでるところが先進国家と根本的に異なる点である。
「住宅投資ファンド」なるものを立ち上げて、一ケ月7%の配当を謳った、俗に言う「中国版REIT」。(REITとは「不動産投資信託」で、日本にも米国から入ってきて、ことし上半期までは成績が良かったが、本国のサブプライム危機により、現在急速に値崩れ、下火となった)。
中国の田舎町では一口一万元(邦貨=16万円)から参加できると宣伝された(ま、ネズミ講のたぐいですが)ので多くの庶民が欲を出して群がった。地域のデベロッパーはそれで資金を調達し、マンション、ショッピング・アーケート、ホテルを建設した。
だが買う人がいなかった。たちまち資金繰りに困る。
▲湖南省、河南省、浙江省で一万人希望の新型“不動産暴動”
「カネ返せ!」を叫ぶ暴動は中国全土に記録されている。日本でも報じられたのは9月3日に湖南省吉首で起きた一万人暴動。警官隊が五千人動員されてにらみ合い、鉄道の軌道をデモ隊が走ったため鉄道が止まった。
原因は「偽REIT」の経営者がカネの持ち逃げとされた。
9月18日には浙江省の麗水で一万人が騒ぎ、警官隊と衝突、二十人以上が負傷した。原因は10万人から30億元(邦貨=480億円)も集めた開発業者が、それでも資金繰りが続かず倒産したことによる。
河南省の商丘では被害者7400名、暴動は聖火リレーを中止させるほどで、寧夏回族自治区の銀川でも同様な暴動がおきた。「不動産投資のカネ、かえせ」である。
そもそも中国ではいくら建物をこしらえても売れないので、偽造書類で購入させるのだ。幽霊屋敷のようなマンションやがらがらのショッピング街が目立つのはそのためだ。
日本では住宅資金の借り手は年収のせいぜい三倍まで。米国のサブプライムは、それを五倍、六倍にふくらませた偽造書類をでっち上げ販売し、その未来の売り上げを先に「証券化」し、さらにデリバティブというレバレッジをかけたので、これほど天文学的被害となった。実際の30倍の複合化した証券化が進んでいた。
中国の場合、国民の平均所得が1000米ドル。どうしてそういう低所得者が日本円で6000万円、一億円のマンションを買えるのだろうか?
偽造書類は年収を30倍、50倍にふくらませ、したがって販売しても、実際のカネは入らない。
デベロッパーはそれでも開発をやめず建設をやめず、とうとう、そのインチキブームの最終的ツケの局面にきたわけである。
北京で上半期の不動産物件の販売成績が前年同期比で63%おちた。上海69%、深せんは前年同期比で84%の落下となった。
販売件数が崩壊すれば、つぎは価格崩壊が起きる。不動産暴落を避けようと北京中央は金利を下げ、預金準備率を下げて通貨供給をにわかに増やし始める政策に転じたのが五輪直前だった。しかし、間に合わなかった。
(読者の声1)貴誌通巻第2336号(10月2日発行)にCIA元幹部アーサー・ブラウンの言として「北朝鮮の核武装を米国は黙認する」「中国が台湾に物理的行動にでても、米国は静観する」「尖閣諸島に関しても同様、米軍はなにも出来ないであろう」とありましたが、元CIA幹部とも思えない甘い観測なのにおどろきました。
韓国でさえ竹島領有権での米国政府からの支持ないし容認を条件にしたリーマンブラザーズ買収の提案をけったというのに、中国が尖閣諸島領有権で中国の侵出を黙認することを条件に米国の破綻した金融機関の救済に向うとはとても思えません。
麻生氏でさえ首相になったとたん嘗ての主張を引込め村山談話を墨守すると言っています。
日本をちょこっと押せば譲歩するのに、なにも米国政府の支持・黙認を得るために既に破綻したビジネスモデルに基づく企業やもう役に立たなくなったスキルしかない高給社員に給与を払い続ける企業を買収するはずがありません。
中国が欲しいのは、これから重要になる最先端の技術を持った企業です。
いま、軍事関連でない限り何の制約もなく超安値でそんな企業が買収できる局面で、何で尖閣諸島の領有権程度の手土産で、中国政府が既に死んだビジネスモデルに基づく破綻した企業を相場以上の値段で買ったり、資金提供するわけがありません。
私が中国政府の幹部なら日本の最先端技術を持った企業を今の安値で買収します。これが一番よい投資です。
現在、中国政府幹部が本当に恐れていることが二つあります。
その一つは、日本に本物のナショナリズムが根付くことです。
そして米国政府が尖閣諸島、竹島、北方領土の領有権で中国、韓国、ロシアの肩をもつことが、左に多少傾いた人たちまでもナショナリズムへ向わせることを中国共産党幹部は知っています。
米国はそこまではしないであろうという淡い期待が、日本の保守層および大衆がナショナリズムに向うことの防波堤となっています。
しかしいったんその防波堤が破れれば、ポピュリズムの権化の朝日新聞など右翼へ急旋回です。それが中国共産党の専制にとっていかに彼らにとって危険なことか、中国共産党幹部は知っているはずです。
米国の指導層は中国が既に米国で行なった投資を引き上げれば、大暴落して大損することを知っています。そんなことを中国政府ができないことを知っています。(ST生、神奈川)
(宮崎正弘のコメント)ご指摘有り難く、いつもの慧眼に感謝します。希望的観測として、そうでしょうね。アーサー・ブラウンの言葉は「警告」の意味が大きく、小生も、最悪のシナリオを「示唆」した云々と、語彙を選びました。
(読者の声2)貴誌10月2日付けの「全米一の投資かウォーレン・バフェットが乾坤一擲の賭けにでた」。
以前、ウォーレン・バフェットはCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)は「大量破壊兵器」と言っていたのを確かインターネットの記事で読んだ記憶がありますが、そのうえで、多額の出資をしようというのですからよっぽど自信があるんでしょうか?
それとも、GSやGEには何かしらの公的援助が入るという確実な情報でもあるのか・・
まぁー過去に株で100万損したとか云って八つ当たりをしていたような人間には到底理解できませんが・・。
7000億ドルの公的資金の話は、下院で否決され上院で可決。再度下院へということになりましたが、普通の暮らしをしている米国民からすれば確かに納得しないと云うのが普通の感情です。
少なくとも7000億ドルでケリがつくのなら話の仕方もあるでしょうが到底無理なような話だと思いますし。
そもそもそのお金は自分の国の懐にあるんですか? と・・・一言。
おそらく、日本と中国が米国債という形で援助するんでしょうがもういい加減にしろという感じです。
イラク戦争の時も確か相当な米国債を買ったと記憶していますが、今度はどうするんでしょうか?
米国の植民地と言われている日本にそんな買う買わないの権限はないのでしょうから・・はなっから・・。
中国なら、台湾と引き替えに金を出すでしょうが、日本は見返りなし? ハワイとアラスカでもくれませんかねー それとも核爆弾でも攻撃ミサイルでも良いですよ。
ついでにアジア地域で展開している米軍一式とか・・・まぁー半分冗談としてなんらかの見返りは必要でしょう。冗談抜きで・・・
中国と日本どちらを取るかと云われれば、普通は日本だとおもいますがねー。中国は簡単に裏切るけど日本は裏切らないというより裏切れない?
オバマが公開討論会で中国は多額の米国債を買ってくれているとか云ったそうですか日本だって馬鹿みたいに買っているけど一言もなかったようです。所詮、植民地日本は関係ないと云ったところでしょうか。
しかし今回の一連の出来事を見るにつけ、ことごとく日本はついているとしか云いようがありません。最先端の金融工学とか云うものにみごとに乗り遅れたのに結果的には、そのおかげで助かった。
バブル崩壊で日本の金融は完璧に外資に食われることおもったら、なんだかんだとしぶとく生き残った。
別に日本の金融が特に優れていたわけではないのに・・・・。
邦銀が今度は逆に攻勢に出で外資へ触手を伸ばしているようですが、今の感じではどうも損するのを想定していて、万が一失敗しても良いという感じに見えるのは私だけでしょうでしょうか?
後々、どこかから圧力が掛かって多額の資金要請をされる前にある程度金を出しておくというのもありかなふと思ってしまいます。
個人的には、日本の株式市場は意外としぶとい動きをしているなーとは思っているのですが どうなんでしょうかねー。
今の米国市場などは規制だらけである意味中国に類似するような怪しさです。さてさていったいどうなることやら。ウォーレン・バフェットはいつ買っていつ逃げるのかぜひ教えてほしいものです冗談抜きで。(品川 S402)
(宮崎正弘のコメント)日本の攻勢をアメリカ人の一部は「火事場泥棒」と見ている。また三菱UFJ銀行、野村證券のウォール街への一気攻勢を「千載一遇のチャンス」ととらえている日本人も意外に多いようです。
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