2373 占領下の日本の哀しみ 平井修一

散歩をしながら思いついた。「国破れて惨禍あり、城春にして損耗深し」。
まったくもってこの前の戦は散々だった。勝ち負けは兵家の常、喧嘩だから負けたのは仕方がないにしても、日本人としてのフグリを抜かれてしまったのではないかと思うほど、自存自衛の精神が後退してしまったのは実に残念なことである。
7年間もの重苦しい占領時代、我が国の政治家は胃がきりきり痛むような政治運営をせざるを得なかったのだから、小生も同情する。
国会議事録サイトを眺めていたら、吉田茂総理と中曽根康弘大勲位の質疑応答があった。それにしても中曽根氏の政治歴は本当に長いのだなあとあらためて感心、尊敬する。
占領下だからGHQの方針に逆らうことはできず、吉田総理はしばしば「速記を止めて」と指示している。GHQに対する本音の発言はかなりカットされているのが哀しい。
【昭和23年12月11日衆議院予算委員会】
○中曽根委員(野党:民主党所属) 今の私の質問は國民が非常に迷つておることでありますから、この委員会を通じて首相の御信念を披瀝していただいて、國民に安心させていただきたい。こう考えて申し上げたのでありまして、必要な部分は言論機関においても制限していただいてけつこうでありまするが、首相の御信念だけはもし可能であるならば掲載を許可していただきたいと思います。
ただいま総理大臣の非常に御懇篤なお答えのうちで、警察力が非常に弱いということをおつしやいました。私も非常に同感でありまして、聞くところによりますと、日本海方面において密輸入船やら、あるいは海賊船が非常にある。
それに対して日本の防衞力は海上保安廳なりあるいは警察官がピストルを持つて出ておるにすぎない。それに対して向うは機関銑を持つておる。そこでこちらは太刀打ちができないという現状であります。
また國内にありましても、警察力が非常に貧弱であることは御存じの通りでありますが、先般警察官の数を13万2千人でありましたか、増員するとかいうことを新聞紙上で見ておるのでありますが、この警察力の充実の度合は今どういうふうになつておるか。
私は13万2千人になれば、当然予算的措置に出て來なければいかぬと思いますが、予算的措置がこの予算には出ておりません。その点から警察力の現状並びに充実について、総理はどういうお考えを持つておられますか、お伺いいたしたいと思います。
○吉田國務大臣 この問題は現在の必要と照し合せて、またGHQとの関係もございます。というのは日本においてドイツ等の例を考えて、警察官を増員することが再び日本の軍備を強化するのである、あるいは警察官に名をかりて、よくもとの軍人であつたものが警察に入つて、日本において再軍備というようなうわさがあったり、
あるいは御承知の通り地下運動というようなことも種々外國の新聞等に現われて來るのでありますが、地下運動がないことは明らかでありますが、警察力については一時にあまり増加するために、日本の再軍備というようなうわさの立つことをおそれて、GHQも人員の増加についてはよほど用心した考えを持つておるのが現在であります。
かりに人員はそのままとしても、装備の点において、お話のように今日、私の承知しておるところでは、警察官7人に対して1挺のピストルを携帶せしめておるというような実情であつて、装備の点においてもはなはだ不満足な状態であるのであります。
この装備を充実するということについては異議はないのでありますが――異議はないというのはGHQもそれを認めておるのでありますが、やはり再軍備という問題にひつかかつて、話がまだ進行しませんが、必要はGHQも認めておるので、装備も増さなくてはいかぬ。
また装備のみならず、ジープとかそういうような警察官の機動力を一段と増さなければならぬということも認めておる話で、多少時期の経過とともに相当の増員なり装備の増強なりということは、実現し得るであろうと私は考えております。
GHQが占領に対する日本人のレジスタンス運動を恐れていたことは発見であるが、武装解除の末に「警察官七人に対して一挺のピストル」しかないなんて、「日本民族の悲劇」時代の本当に哀しい記録である。
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