FED、銀行の頭越しに企業のCPを買い取る新機関設立のかまえ。どうやら米国の金融は、資金繰りがカラッケツの様相だ。
ベン・バーナンキFBR議長(中央銀行総裁)は、資金不足の陥った米国経済を立て直すため、貸しはがし経営に陥った銀行の頭越しに、直接、企業の発行する短期コマーシャルペーパー(三ヶ月以内)の買いとりをする新機構の設立大胆に動く計画と欧米誌が一斉に報道している。
要するに欧米企業はたとえ経営に問題がなくとも、銀行の資金不足により日々の運転資金が不如意になっているため、FBRが銀行の役割も演じようとする画期的なプランだ。
さすが「ヘリコプター・ベン」の異名をとるFRB議長だが、実現にはまだ紆余曲折が予測される。
いまの危機は悪化へのスピードが速すぎる。企業は高金利で短期の資金しか銀行から借りられない惨状。
ゴールドマンサックスとJPモルガン・チェースが株式共有ホールディング会社を形成し、ゴールドマンサックスが銀行に変身して、この擬似大恐慌を生き延びようとしている。先を見越したウォーレン・バフェットはGSに50億ドルを出資し、優先株を買う。
S&P(スタンダード・プア社)など恣意的な行為が目立った格付け機関になりかわって、全米最大最強の投資家=ウォーレン・バフェットが“新しい格付け機関”として登場したことになる。
「大手の金融機関の多くが消え去り、或いは破綻目前で機能不全に陥った現在、一部は国有化された安堵したところもあるが、今後、ゴールドマンサックスにとって、この擬似大恐慌をいかに生き残るかが最大にして喫緊の課題である」(ロスアンジェルスタイムズ、10月7日)。
戦後わずか250人の従業員で再スタートをきったゴールドマンサックスは、CPを安い手数料で大量に引き受け、次々と顧客を獲得してきた。
一方、JP・モルガン銀行は当時のウォール街の覇者。「企業は人であり、優秀な活気のある人材をかかえる企業には輸血を」と判断の基準においた。
ウォール街一番地にでんとかまえたJPモルガンはチェースマッハッタンなどを買収し、大きくなった。投資銀行のモルガンスタンレーは関連企業である。
「ウォール街」のあたらしい覇者となったGSは、本拠がパークアベニュー50番地。ロンドンのシティがいわゆる旧街区シティではなくカナル地区に移転したように、コンピュータネットの発達は金融街の地政学もかえていた。
さてゴールドマンサックスは、むしろ「正確な情報の提供が顧客を増やすうえ、自信と優秀さへの参画を促す」とした経営方針をとった。
だから競合各社がCDO取引などに熱中していたおりに、ゴールドマンサックスは「住宅担保物件のポジションを減らせ、すべてのポートフォリオを10%下げよ」とする経営路線に切り替え、さらに07年にはCDOの保有を劇的に減らしていた。
対照的にシティグループのチャールズ・プリンスCEOは「音楽が鳴りやまない限り、ダンスをやめることはない」と逆の経営方針を示してきた。
「今回の金融危機と29年大恐慌とが際立って異なるのは事態の悪化が猛烈なスピードで進んでいることである」(ヘラルドトリビューン、10月8日付け)。
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2375 資金繰りがカラッケツの様相 宮崎正弘

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