中国、鉄鋼生産を20%減産へ。景気後退の荒波が目の前。次のショックは“中国版サブプライム”問題の爆発だろう。
宝山製鉄は粗鋼生産を5%増やすと発表する一方で、鞍陽、山東、河北の各製鉄ならびに首鋼製鉄の四社は20%減産予定を発表した(香港発ロイター、8日)。
上記四社は昨年実績で一億トン、昨年の中国の粗鋼生産は五億トンを越えていた。
鉄鉱石の輸入も急減した。
「バルト・シッピング指数」によれば、五月に記録していた11793から、8日には2922へ急落していることが判明、数字だけを短絡的にみても75%も鉄鉱石の輸入が減っている事実を示唆している。
トヨタがすでに中国での生産を十万台減産と発表している。これは容易ならざる事態の到来だ。
ウォール街発の世界同時不況の荒波は、中国をこれから襲撃することになる。
第一に対米輸出比率が全GDPの20%前後もあり、(輸出そのもののDGDP比が35%内外ある)このため景気の大幅後退は避けられない。輸出先を産油国やアフリカ諸国にシフトしたところで消費力はたかが知れている。だから中国の大不況入りも不可避的なのだ。
第二にウォール街の株安により在米華僑らは手元資金充足のため、中国投資分を損切りでも回収する。
中国への間接投資が激減するため、外貨準備高にも変調がでてくる。
「外貨準備から2000億ドルを上限に米国債を購入する用意がある」とした香港「明報」の報道は新華社海外版(8日)によれば、当局が否定した。
第三は外国企業内に労働組合の結成命令、特許とりわけ暗号ソフト開示要求、人民元高ならびに諸経費、コスト高等の理由で外国企業が中国から撤退し始めており、IMF予測のGDP成長率9・3%(08年),9・7%(09年)達成はかなり難しい。
内需転換型への移行が円滑に進んでいないからだ。
また日本企業は中国が、中国国内で生産する技術情報の開示義務を法制化したため、「これでは生産続行は難しくなる」と経団連も強く抗議しているが一向に埒があかず、撤退せざるを得ない企業もでてくるだろう。
▲経済構造がいびつ、自由のない市場経済は限界をしめしている
国内的にみても、インフレが猛烈な勢い、富裕層にも焦燥と不安が広がっている。
中国財閥五十傑のうち「三分の一資産価値を減らした」(フォーブス)らしいが、経済構造のいびつさが、これからもたらすマイナス面を注視する必要がある。
第一に不動産暴落は歯止めがかからない。当局は過去一年間に金利を17回変更し、預金準備率を六回変更して対応しているが効果はゼロに近い。
第二に上海市場の株価暴落がとまらない。昨年10月16日の絶頂からすでに70%前後もの暴落を示し、なお下落を更新中である。
第三は物価高騰、失業の拡大と暴動の大規模化がある。「正直に言って、これほど悪性の事態の到来は誰も予想していなかったし、そしてこの先の不安たるや巨大な脅威といえる」(ヘラルトトリビューン、10月9日付け、投資家のコメント)
第四は政府による景気刺激策の強化だが、北京五輪へ480億ドル投資を使い切り、政府もゲルピン状態。予算の大規模な措置によるプロジェクト拡大での景気浮揚は、おそらく効果が上がるまい。
かくしてウォール街発の世界大不況の大津波はEU、ロシア、中南米を一巡し、韓国、台湾、日本をもろに襲撃した。つぎは中国に確実に向かう。
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