ウォール街発世界大不況、泥沼の最悪の底が見えてきた。ファニー・メーの海外債権破綻が起これば、次は米国債のデフォルト。
日米同盟が危殆に瀕する地獄のシナリオが見える
三月のベア・スタンーズ救済から地下水脈で流れが大きく変わっていたウォール街の危機は、市場の水素爆弾だった。要するに「デリバティブ」とかの面妖なる金融商品とビジネスモデルの破産である。
九月にリーマン・ブラザーズがいきなり倒産すると連鎖がおこり地獄が出現した。
ヘリコプター・ベン(バーナンキFRB議長)とポールソン財務長官は救済の方向で議会工作を始める。
ブッシュ大統領はいったい何が市場でおきているのか、正確には理解していなかったし、いまもおそらく出来ていない。
AIGは救済、ファニー・メー、フレディ・マックは政府支援。この間にJPモルガン・チェースとゴールドマンサックス、メリルなどの合併劇が突如おこって金融界再編、現時点での結論を言えばデリバティブを主導した投資銀行が消滅し、ヘッジファンドは壊滅的打撃を受け、投資信託はMMFまでカラに近くされて運用不能となり、レバレッジ神話とデリバティブの陥没である。
日本でもAIG関連のアリコジャパン、GEエジソン保険などが被買収対象と化し、リーマンジャパンは資産保全命令。REITの大手がはやくも倒産した。
危機は世界に波及し、先進国はとりあえずドル資金を供給する態勢を短時日裡につくり、EU各国はこれとは別に協調態勢を敷く。G7が世界的な協調態勢の強化を宣言に盛り込む。
アテにされた日本は三菱UFJ銀行が果敢にもモルガン・スタンレーに出資し、野村證券がリーマン・ブラザーズのアジアと欧州中東部門を買い取った。米国内でもウォーレン・バフェットがGSとGEに大幅な出資を鮮明にした。
しかし危機は去らず、むしろ深まった。
なにより議会を通過した金融安定化法案直後、ウォール街の株価はまだ下落したのだ。
不気味な静けさを保つ中国は経済的判断より政治判断を優先、放置すれば次なる危機はドルの崩落だが、自ら巨大な犠牲になることさえおそれず、米国債購入に動かない。
虚勢をはってきた韓国経済は一気に沈没、韓国ウォンは暴落し、アジア株式はウォール街に比例しての底なし下落となる。
インドネシアは株式取引を停止し(9日)、ロシアは株式暴落の報道を禁止した。
さて、小誌がたびたび指摘したように、これは戦後最大のパラダイム変更の節目である。
石の貨幣が紙幣となったように、戦後英国ポンド体制がドル本位体制になった。冷戦が終わり米ソ対立が終わった。これらがパラダイムシフトであったとすれば、その世界的な金融の機能と機関を支えてきたブレトンウッズが崩壊してゆく過程にある。その認識が殆どの市場関係者にはない。歴史家の目がないのだ。
▲米国債デフォルトがおきたら?
ドル本位制が崩壊するまでには、代替通貨がない以上、時間がかかるだろう。
ドルはじりじりと値を下げ、その分をユーロと補助的に英国ポンド、スイスフランが肩代わりし、日本円の国際的決済ポートフォリオも現在の4%台から7%前後には上昇するだろう(日本円はアジアのスイスフランのような独自の立場を確保できるかも知れない)。
人民元は香港ばかりかタイ、ラオス、ベトナム、カンボジア、北朝鮮では既にハードカレンシー化しており、なんと台湾でも通用するまでになって地域貿易の基軸通貨に変貌しているが、そうはいっても国際通貨になるにはまだ要件を満たしていない。
近未来のシナリオの一つとして考えられるのは、一種徳政令である。
ドルは現在流通する通貨を無効とさせ、新札を発行する。
或いは金にリンクしたドルの新紙幣を発行し、旧来のドルは「新ドル切り替え」で大幅な減価をおこなう(戦後、日本の新円切り替えのごとし)。
米国債権のデフォルトもあり得ないシナリオではない。
米国の累積赤字は10兆4000億ドル。これが10月3日に成立した「金融安定化法」により、11兆3000億ドルとなる。
過半を保有するのは日本、中国、EUなどである。
もし米国債という世界最強の軍事大国の信頼が破綻した場合、日本はそのときどうするのか?
イラン、リビアなどに米国は「在米資産凍結」をしたように在日米国資産を凍結する措置にでるという強硬手段もシナリオの一つとして考慮しておくべきだろう。
何を担保に抑える? 核兵器搭載の米空母、原子力潜水艦、三沢などに配備されたF16ジェット機等ではないのか。むろん対米従属政治の発想しかない、アソウとかオザワとかに、そんな政治的度胸が期待出来はしないが。
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2382 地獄のシナリオ 宮崎正弘

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