マルチ商法が国会で問題になっている。マルチ商法業者と関係が深いといわれる民主党にとって衆院選挙を目前にして、”国民生活第一”の看板に傷がつきかねない。実質的な小沢派である一新会の事務局長だった前田雄吉衆院議員がマルチ商法業者から講演料や献金を受けていたとして離党、次の衆院選挙には立候補しないことになった。
民主党には山岡賢次国対委員長などマルチ商法業界から献金を受けた議員がいることから早めにこの問題の幕引きをしたいところだが、今度は麻生内閣の閣僚である野田聖子消費者行政担当相が過去にマルチ商法を擁護する国会質問をしていたことを委員会審議の場で告白、思わぬところに飛び火している。
マルチ商法とは連鎖販売取引のことである。昭和40年代にアメリカのホリディ・マジック社が、「Multi-Level Marketing (マルチ・レベル・マーケティング)」と呼ばれる商形態を発案して、この商法が日本に上陸した。
違法なネズミ講と同一視されることから、ネットワーク・ビジネスと言葉を置き換えたりしている。新しい商形態なために当初は規制する法律がなかったが、1976年に「訪問販売等に関する法律」が制定され、勧誘行為などが法律による規制の対象となった。
しかしマルチ商法に対する見解が、公的機関の中で必ずしも統一されていない実態がある。経済産業省や警視庁においては、連鎖販売取引とマルチ商法を同義で使用している。だが独立行政法人国民生活センターでは、連鎖販売取引とマルチ商法を同義として使用していない。
国民生活センターは、マルチ商法をねずみ講的販売方式全般について広く総称することを基本としている。 地方自治体の消費生活センターでは、マルチ商法を連鎖販売取引と同義としている場合や、ねずみ講的販売方式全般について広く総称している場合など、消費生活センター毎に違いがある。
消費者側から強引なマルチ商法に対する苦情が寄せられ、その一方でマルチ商法の業界団体からは法規制の緩和を求める活動が活発化してきた。野田消費者政担当相が12年前とはいえマルチ商法を擁護する国会質問をしていたのは噴飯ものだが、業界団体は民主党を支持する代わりに国会で規制緩和の法改正をして貰う構図となっている。
「訪問販売等に関する法律」は、2000年に「特定商取引法」に改称され、以降数度の法改正を重ねている。
本来なら自民党の支持団体にマルチ商法の業界団体があって、消費者側の団体が民主党の支持に回るのが分かり安いのだが、逆の”ねじれ現象”が起こっていて、しかも小沢氏の周辺に献金行為が集中している点が複雑化している。
いずれにしてもマルチ商法の業界団体の票は欲しいが、消費者の反発は怖いというのがドタバタ劇の真相ではないか。
<16日の参院予算委員会で、自民党はマルチ商法業界と民主党の癒着を浮き彫りにする戦術を描いていたが、野田聖子消費者行政担当相が過去にマルチ商法を擁護する国会質問をしていたことを突然「告白」。逆に野党側から追及される展開となり、審議は迷走した。
予算委で自民党の森雅子氏は、前田雄吉氏だけでなく民主党の山岡賢次国対委員長、石井一副代表らもマルチ商法業界から献金を受け、業界団体が民主党のパーティー券を購入したにもかかわらず党の収支報告書に記載がないことを指摘。「民主党の体質の問題ではないか」と追及した。
ところが森氏が、担当相の野田氏に所感を尋ねると、野田氏は96年4月の衆院商工委員会で、業界を擁護する趣旨の質問をしたことに突然、言及。「勉強不足で消費者側に立った質問ができなかった」と釈明した。
議事録によると、野田氏は当時、マルチ商法について「この業界こそベンチャービジネスのさきがけとして存在している」「大多数は協会等の自主規制の中でいいものが育っている」などと業界側の立場で質問していた。
この日の予算委では、その後に質問に立った共産党の大門実紀史氏が「前田氏と同じ趣旨の発言」と野田氏を追及。野田氏は「業界の依頼ではなく、自分の素朴な疑問からの質問」と釈明した。業界などからの政治献金については「にわかに答えることはできない。後日調べて報告する」と述べるにとどめた。
野田氏の突然の言及は、野党側からの追及を察知したためとみられる。(毎日)>
杜父魚ブログの全記事・索引リスト(10月1日現在2358本)
コメント