2457 辞表提出を拒否した田母神氏 花岡信昭

空幕長を解任された田母神俊雄氏は、辞表を提出しなかった。その結果、定年退職扱いとなった。これでいい。辞表を提出しなかったところに大きな意味がある。
田母神氏は60歳。空幕長解任によって、空将の定年にあてはまることになり、防衛省はこれを適用した。
防衛省としては、懲戒処分も検討したというが、田母神氏が事情聴取を拒否した。これはこれで防衛省の立場をおもんばかったものだ。
懲戒処分となると、いったいどういう理由をつけたらいいのか、防衛省も頭を悩ますところだった。論文募集に応じたことを官房長に文書で報告していなかったため、内規違反の適用も検討したようだが、となると、省内の士気低下といった副作用を招きかねない。
論文が機密漏洩にあたるという解釈も難しい。事情聴取して田母神氏が堂々と反論したら、これまた対応は難しくなる。
知恵者はいるもので、定年退職の適用に落ち着いた。防衛省としてはこれでスピーディーな処理ができることになる。
田母神氏は記者会見で「日本もそろそろ自由に発言できる時期になったと思った私の判断が誤っていたかもしれない」と述べた。
そこは当方も同じ認識だ。「村山談話」はあの当時の政治的判断を踏まえて出されたものだ。こういう内容にしなければ、中国、韓国がおさまらなかった。
それがいまだに呪縛として残っていたわけだが、いま、村山談話の内容を変更するだけの政治的余裕は麻生政権にはない。それだけのエネルギーはとてもではないが、持ち得ない。
したがって、本音で言えば、多くの保守政治家は「あの戦争は100%侵略戦争だった」とは思っていない。麻生首相も浜田防衛相もそうだと思う。しかし、表でそのことを言うわけにはいかない。
「田母神論文」には、いくつかの歴史の事実関係で異論を持つ向きもある。それはそれでいい。だが、個々の記述の是非にとらわれていたら、「田母神論文」が提起した大きなテーマを見失うことになる。
辞めてから発言すればよかった、という指摘もあるが、現職の空幕長だったからこそ、これだけの反響を呼んだのである。OBの立場になってからの発言とは影響力が違う。
野党は田母神氏を国会招致する方針だという。審議引き延ばしの批判をかわす格好の材料となった。
それもいい。田母神氏は国会の場で野党議員をこてんぱんにやっつけてほしい。いずれが「国家・国民」を大切に思っているか、国民の前に明らかになる。
以下、田母神氏の記者会見についての産経ネット配信記事。
民間懸賞論文に政府見解とは異なる歴史認識を主張する内容を発表して航空幕僚長を解任された田母神俊雄氏が3日夜、時事通信社(東京・東銀座)会議室で記者会見を行い、「一言も反論できないなら北朝鮮と同じだ」などと語った。詳細は以下のとおり。
【冒頭発言】
このほど自衛隊を退職するにあたって一言所感を申し上げます。私は10月31日付で航空幕僚長を解任され、11月3日付で自衛官の身分を失うことになりました。
自衛隊に勤務して37年7カ月、防衛大学校から数えれば通算41年7カ月になります。自衛隊関係者や国民の皆様方の支えがあって今日まで勤め上げることができました。感謝に堪えません、誠にありがとうございました。
解任の理由は、私が民間の懸賞論文に応募したその内容が「政府見解と異なって不適切である」というものでした。しかし、私は国家国民のためという信念に従って書いたもので、自ら辞表の提出は致しておりません。
その結果、解任という事態となりましたことは自衛隊とともに歩んでまいりました私にとりまして断腸の思いであります。もとより私にとって今回のことが政治に利用されるのは本意ではありません。また、航空自衛官、ひいては自衛隊全体の名誉が汚されることを何よりも心配致しております。
私は常々、「志は高く熱く燃える」ということを指導してまいりました。志が高いということは自分のことよりも国家や国民のことを優先するということです。
熱く燃えるということは、任務遂行にあたりいかなる困難に突き当たろうとも決してあきらめないということです。論文に書きましたように、日本は古い歴史と優れた伝統を持つすばらしい国家です。決して「侵略国家」ではありません。
しかし、戦後教育による「侵略国家」という呪縛(じゆばく)が国民の自信を喪失させるとともに、自衛隊の士気を低下させ、従って国家安全保障体制を損ねております。
日本の自衛隊ほどシビリアンコントロール(文民統制)が徹底している「軍隊」は世界にありません。私の解任で、自衛官の発言が困難になったり、議論が収縮したりするのではなく、むしろこれを契機に歴史認識と国家・国防のあり方について率直で活発な議論が巻き起こることを日本のために心から願っております。
(質疑応答)
【論文を書いた理由】
 --(論文は)持論ということだが、政府見解と異なる歴史認識の論文を現役のこの時期に書いた理由は何か
「私が常々考えていたことでありますけれども、日本が21世紀に国家として発展してゆくためには、この自虐史観、そういった歴史観から解放されないと、日本のいろんな政策に影響が出て、なかなか国とした、いわゆる日本が自主的に判断する政策がやりにくいのではないか、と常々思っていまして。
日本が悪い国だと、日本のやってきたことはみな間違っていたと、いったことが修正される必要があるのではないか、と思います」
--現役をおやめになって発言されるのは比較的自由だと思うが、どう
して現役の今、書かれたのか
「私、実は、これほどですね、大騒ぎになるとは予測していませんでした。もうそろそろ日本も自由に発言できる時期になったのではないのか、という私の判断がひょっとしたら誤っていたかもしれません」
--きょう記者会見を開いた理由は?
「みなさんの一部から私に電話があって、ぜひやってくれという話があったからであります」
【解任について】
--解任され、任半ばでおやめになることで無念なことは何か
「日本はまさにシビリアンコントロールの国でありますから、大臣が適切でないと判断して、やめろということであればそれは当然のことであるというふうに思います。結果が出たことについて、無念とかそういうことを考えていると次に前進ができないので、これは気持ちを切り替えて次、またどうしたらいいかということを考えていきたいというふうに思っています」
--後輩の自衛官に言い残すことはないか
「これは私がずっといってきたことですが、われわれは国家の最後の大黒柱である。従って、志を高くもって、どんな困難があっても常に情熱を燃やし続ける、と。志が高いということは、さっきいったように、自分のことより、国家や国民のためを常に優先した言動をとる必要があるというふうに思います」
【論文の内容】
--論文の内容については、今も変わらないか
「内容については誤っていると思いません」
--論文を拝読して、市販の雑誌から引用が多い。田母神さんご自身が発見されたことはほとんどないと思うが
「それはおっしゃるとおりで、私自身が歴史を研究してというより、いろんな研究家の書かれたものを読んで勉強して、それらについて意見をまとめるということであります。なかなか現職で歴史そのものを深く分析する時間はなかなかつくれないと思います」
--さきほどこれほど大騒ぎになるとは予測しなかったとおっしゃったが、それは論文がこれほど読まれることはないだろう、という意味なのか、内容について国家が受け入れるようになると思われたのか
「後者の方です。日本の国がいわゆる言論の、どちらかというと日本の国は日本のことを守る、親日的な言論は比較的制約されてきたのではないかと思います。で、日本のことを悪くいう自由は無限に認められてきたのではないか。しかし、その状況が最近変わってきたのではないか、という風に判断をしておりました」
--懸賞論文が広く皆が読むということになるとはご承知の上でしたか
「そういう風になることは当初は、まったく知りませんでした。ただの普通の懸賞論文として」
--APA(懸賞論文の主催者)側はそういうことは言わなかったのか。
「ぜんぜん」
--公表されるとは思わなかった
「優秀な論文はAPAが出しているアップルタウンという雑誌に発表されるということは知っていた。まさか、私が優秀論文に入賞するとは夢にも思っていませんでした」 以上、産経配信記事。
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