2478 「強い」という意味のシカゴ 古沢襄

オバマ政権でホワイトハウスの軸となる首席補佐官・ラム・エマニュエル下院議員の情報は必ずしも十分でない。オバマ氏の地元イリノイ州の選出の議員で、ユダヤ系アメリカ人。イスラエルが早速、歓迎の意を表明している。
またクリントン政権下でホワイトハウスの上級顧問を務めた経歴を持っている。来年一月二十日の本格始動を前にして、オバマ人事の骨格が見えてきたが、言われているのはシカゴ人脈の登用とクリントン政権時代の人材の再登用。エマニュエル氏はまさにこの条件ぴったりである。
とはいうもののエマニュエル氏の噂はあったが、ABCニュースが十一月五日朝、速報するまでは各社とも踏み切った報道は出来ないでいた。ABCニュースが速報するや各メデイアが堰を切ったようにエマニュエル氏の登用を伝えている。エマニュエル氏が報道番組に登場したのもABCニュース。よほどABCニュースが好きなのかもしれない。
ABCニュースはアメリカの三大ネットワークのひとつでCBSニュース、NBCニュースとともに有名だが、日本のNHKなどとも提携関係にある。
アメリカの最大都市はニューヨーク。二番目がロサンゼルスでシカゴは第三の都市になる。シカゴの語源は先住民の言葉で「強い」という意味だが、元の意味は野生ニンニクのことで、イリノイ河口付近にニンニクが自生していたという。
1837年にシカゴ市に昇格、翌年には鉄道が開通すると交通の要衝として大発展を遂げた。もともとは主要産業が農業、シカゴはとりわけ小麦を東部の都市に送り出す集散地として発展している。初期には奴隷としてアメリカ建国時に農業などの労働を担っていたアフリカ系アメリカ人がアメリカ南部から次々に移入したという。
シカゴというと私などは禁酒法時代のアル・カポネのイメージが先に立つが、アメリカの黒人貧困層が築いた文化、ブルースやジャズ、シカゴ文学といわれる日本でいえばプロレタリア文学まで生まれている。
オバマ側近をシカゴ人脈で固めれば、これまでにないアメリカ大統領が生まれるかもしれない。それだけに保守的なアメリカ支配層から社会主義的な大統領という攻撃を受ける可能性がある。
エマニュエル氏は攻撃的な性格だといわれている。アメリカのユダヤ系アメリカ人は少数だが支配層に隠然たる力を持っている。ユダヤ系アメリカ人はもともとが米民主党の支持者が多い。初期のブッシュ政権で影響力を行使したネオコンも最初は民主党にいた。
ニューヨークに拠点を持ったユダヤ系アメリカ人からネオコンが誕生して、第二次世界大戦後、マックス・シャハトマンのグループが民主党に入り、党内最左派として活動している。
シャハトマンの死後、このグループは分裂して保守化したネオコンがブッシュ政権に活動の舞台を移したといえる。ニューヨークを拠点としたネオコンはイラク戦争の失敗によって逼塞を余儀なくされている。
だが初期のグループにはシカゴ大学出身の政治学者マイケル・ハリントンがいる。左翼から保守化したニューヨーク知識人に「ネオコン・新保守主義」と名付けたのは、ハリントンらのグループである。
この左派的傾向があるハリントンの影響がシカゴ知識人に残っているのではなかろうか。いずれにしても、オバマ政権は徐々に左旋回していくのではないか。貧しいアフリカ系アメリカ人など非白人から熱狂的な支持を受けるだろうが、アメリカの権力機構を握ってきた支配層さらには軍部から危険視される可能性がある。
杜父魚ブログの全記事・索引リスト(11月5日現在2470本)

コメント

タイトルとURLをコピーしました