2495 ドルと心中しかけない日本 宮崎正弘

いずれ滅び行くドルと運命をともにすることを決めた日本政府。ドル基軸体制の強化、IMFテコ入れ、麻生政権は米国通貨と心中する気らしい。
世界的な金融危機と経済システムの安定化策を協議するためのG20(緊急首脳会合=金融サミット)は11月14日、首都ワシントンで開幕した。
直前に日本は矢継ぎ早の日本案を提示した。
第一に外貨準備から1000億ドルも拠金してIMF増資に応じる。
第二に世界銀行と共同で、途上国の金融機関の資本増強に30億ドル(約3000億円)の基金を創設する。ウォール街発の金融危機が途上国の金融システムに打撃を与えていることから世界銀行が資本注入するためだ。
第三にアジア開発銀行(ADB)の資本を現行500億ドルから倍増させる提案を日本がおこなう。これら三つの主軸からなる日本の金融危機対応を主唱する。
 
G20直前、ワシントンで中川昭一財務・金融担当相はゼーリック世界銀行総裁と会談し、新基金「途上国銀行資本増強ファンド」の共同設立で合意した。
前日にブッシュ米大統領はニューヨークで演説し、サミット議。題は「危機の原因究明、各国の対策の点検、改革に向けた原則の確立」など5つを示した。
IMF改革は「新興国の発言権を拡大すべきだ」とし、資金面での貢献を条件にIMFの運営体制見直しを支持したが、危機の原因は「新興国からの巨額の資金流入が金利低下と重なり、ずさんな融資につながった」と説明して、規制緩和を主因とみる欧州との違いを鮮明にした
▲欧州の反応はワシントンの思惑とは離れている
一方、欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁は同日、ドイツのフランクフルトで講演「金融システム不安を防ぐためには、大西洋の両側で政府が防衛線を築くことが必要」とした。
ヨーロッパ各国の中央銀行による巨額資金供給は「第1次防衛線にすぎない。信用不安の解消には公的資金の投入や銀行間取引の政府保証などによる政府介入が不可欠」とした。
私見をのべるなら「ユーロ」がたとえ統一通貨であっても、加盟各国に中央銀行があって金利を決めており、通貨がある日突然弱体化しても満足に対応できない脆弱性がある。
またウォール街のCDS(くれじっとデフォルトスワップ)を大量に買い込んで、悲鳴を上げたのは、じつはヨーロッパ各国の銀行なのである。
 
FRBのベン・バーナンキ議長は14日、同会議席上で、「危機克服へ各国金融当局が緊密に連携し、必要があれば追加的な措置を講じる準備はできており、各国中銀は電話で頻繁に連絡している」ことを強調するにとどめた。
こうして欧州は米国との差違を明瞭にし、一方「同盟国」の日本は、ただひたすら米国の通貨を守り抜くための犠牲を惜しまないと誓約して世界に、その主従関係を明らかにした。各国は日本の立場を「ドルと心中仕掛けない国」と認識することであろう。
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