2503 西オーストラリアを襲う大不況 宮崎正弘

西オーストラリアを襲う中国ブームの壊滅と大不況。鉄鉱石採掘現場にはアボリジニ労働者と逃げの態勢にある資本家と。
西オーストラリアのピルバラ地方は鉄鉱石の宝庫として知られ、パース港の北に位置し、面積はスペインより広い。
日本の商社も鉄鉱石買い付けのために進出している。この地方には世界的に有名な鉱山会社「BHP」と「リオ・テント」が覇を競う。両社は鉱山から港へ通じる鉄道を独自に敷設し、平行して鉄道が走っている。
ここにフォテスキュー・メタルという新参社があらわれ、主に中国向けに鉄鉱石を輸出してきた。
後者はフォレストという商品ブローカーが米国から30億・豪ドルをかき集めて、最初はニッケル鉱を、つぎに中国の宝山更迭向けに鉄鉱石輸出に転じた。フォレスト社長は豪州一の財閥となった。
世界同時不況の荒波は、このピルバラ地方を急襲した。
同地方の鉄鉱石は40%以上が中国向け。その中国が鉄鋼生産を20%削減、海上運賃が十分男一に凹んだことは以前にも一度、小誌でも報じた。
ラッド首相はすぐに追加予算104億・豪ドルの景気刺激策を発表したが、経済成長は三度下方修正し、下半期は2%成長から中央銀行は1・5%に修正(それさえ超楽観的といわれる)。ラッド首相は外交官出身の親中派政治家として知られる。
しかし、中国向け輸出激減のあおりを受けて、リオ・テント社とフォテスキュー・メタル社は生産を10%削減したものの、余剰資源が港湾倉庫に積み重なる。
古参のBHPとリオテント社は、フォテスキュー・メタル社の鉱区(山奥にある)から港への輸送に両社が平行して走らせている鉄道の使用を要請したが、にべもなく断られる。そこで、政治が介入した。
ラッド政権は鉄道使用を認めよ、と行政命令を出したのだ。
豪州の失業は6%に迫る勢い。主要産業の鉄鉱石はピルパラ地区の死命を制する産業でもあり、しかも同地方には人口比二割がアボリジニなのである。だから政治判断が必要となったわけだ。
フォレスト社長はつい先日まで「豪州最大の富豪」と言われ、個人資産20億円。いまはスッカラカンになりつつあり、豪州財閥地図も塗り替わりつつある。
かくて西豪の中国ブームも去った。
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