文藝春秋の十二月号で「小沢一郎研究 その病魔と剛腕の真実」が永田町で話題になっている。筆者の堺竹央氏は2002年の新潮45の四月号に「番記者は見た!”宗男・眞紀子騒動”永田町トホホ日記」を書いたが、現役の政治記者ならではの多くの関係者からインタビューを取っているのが特徴。
冒頭に出てくる高橋嘉信氏は、前回の参院選で私の旧友・高橋洋介元岩手県副知事が無所属で立候補した時の選挙参謀。小沢一郎氏の懐(ふところ)刀といわれて、二十年余り小沢秘書として辣腕を振るった。それが小沢王国に反旗を翻して、無所属とはいえ自民党推薦の洋介さんの選挙を取り仕切った。
岩手県にはこの手の話が数え切れないほどある。小沢側近と自他ともに任じていた政治家が、やがて離反して反小沢となるのだが、その後釜の小沢側近が雨後の筍(たけのこ)の様にすぐ出てくる。
そのことよりも高橋嘉信氏直伝の選挙戦術には目を見張るものがあった。重点地区に候補者のポスターを集中的に貼るのは、自民党も小沢民主党も同じなのだが、小沢選挙ではポスターがちゃんと貼られているか、別の運動員がわざわざ点検して回る。
のどかな自民党選挙をしてきた町会議員氏は「小沢選挙はここまでやっていたのですかね」と驚いていた。その底には徹底した人間不信と冷徹な管理選挙がある。運動員の手間や再点検に必要なガソリン代などは惜しまない。
自民党選挙では人寄せパンダとなる党や閣僚の有名人を応援弁士に欲しがる。小池百合子さんなどは引っ張りタコとなった。だが、その一方で街頭演説に党員や党友の家族ぐるみの動員が義務付けられる。小泉元首相の来県となれば、自民党の町村会議員の末端に至るまでピリピリしたムードに包まれた。
小沢選挙は街頭演説よりも小人数の集会を数多くこなす戦術が目立った。見た目には自民党選挙の方が派手なのだが、フタを開けると民主党候補が強いことがままあった。概して言えることは、小沢選挙はカネがかかるが、効率化が徹底すれば意外と強いことである。
その点では自民党の選挙は一歩も二歩も遅れている。高橋嘉信氏を講師に呼んで小沢選挙のノウハウを学ぶ方が先決ではないか。
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