2545 ムンバイはポンペイのこと 古沢襄

11月26日から29日にかけてインドで発生したムンバイ同時多発テロの実態が少しづつ分かってきた。正直にいえば私たちの世代はムンバイと言われてもピンとこない。ボンベイの旧名の方が馴染みがある。ポンペイはインド最大の都市、商業の中心地として知られた。
ポンペイは英語の公式名称だが1995年にマラーティー語のムンバイが公式名称になっている。ユダヤ人が迫害されたことのないポンペイだったが、ムンバイ同時多発テロでは市内のユダヤ教正統派のナリーマン・ハウス(ムンバイ・ハバド・ハウス)が襲撃された。ユダヤセンターでは殺害された5人の人質が発見されている。
このところインドとイスラエルの関係改善が著しい。テロリストはこの関係遮断を狙ったことも考えられる。インドからはイスラエル軍向けのインド製車両やITソフトウェアのイスラエル進出などの大型商談が最近、相次いで決まっている。
明らかにパキスタンがテロリストの訓練地だと思う。デカン・ムジャヒディンと名乗る組織が犯行声明の電子メールが報道機関に送ってきたが、このメールの発信地はパキスタンであることをインド警察はつきとめている。逮捕されたテロリストもパキスタンに本拠を置くイスラーム主義組織ラシュカレトイバ(Lashkar-e-Taiba)に所属していると供述している。
だがパキスタン政府はテロリスト集団への支援を即座に否定した。政府としての関与はないのかも知れないが、パキスタン軍部の中にテロリストを支援するグループが存在することは否定できない。軍部が独走して国境線に派兵、両国が軍事衝突する可能性もないとは言えない。
インドはテロリストの制圧に当たって陸軍部隊を大挙動員した。警察のテロ特殊部隊の手に余る状況があった。少なくとも三人の警察幹部が銃撃戦によって死亡した。
警察がテロリストから押収した現金、カードなどから豊富な資金と多国籍の部隊構成が判明している。武器もAK-47、中国製手榴弾、ライフル、自動小銃、大量な銃弾で武装され、ムンバイ襲撃に当たっては海上からボートで潜入している。インド国内のインド人イスラム過激派と呼応し、周到に準備された計画的犯行だといえる。
これまでに発表された犠牲者の数は、死者195人、負傷者295人の合計490人。ムンバイは天然の良港に恵まれ、インド全体の海上貨物の半数を担う港湾都市でもあるから外部からの侵攻を受けやすい。
今回の事件によって海外の企業群が治安の悪さを懸念して撤退することにでもなれば、インド経済は深刻な打撃を受ける。中国に次ぐ巨大市場になるとみられているインドだが、テロリストによる事件が頻発する様だと治安の悪さが致命的な欠陥になるかもしれない。
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