2547 米国に保護貿易主義の懸念 宮崎正弘

米中戦略的経済対話の開始直前、人民元の下落がはじまった。ポールソン以後の米国の対中経済政策を率いるのは、いったい誰?
親中派ポールソン財務長官がブッシュ政権の閣僚を引き連れて、五回目の米中戦略的経済対話のため、北京へ飛ぶ。
財務長官として夥しい訪中記録、その前、ゴールドマンサックス会長時代は70回の訪中。中国を知り尽くしていると自らを規定するポールソンだが、任期満了まであと50日。大衆経済政策の総仕上げである。
議題はエネルギー、環境問題のほか、当然ながら金融危機について。しかし米国連邦議会にあがる対中批判の嵐、とりわけ中国の輸出振興のための人工的な為替操作による人民元安。これがつづくと米国では労組をバックとする民主党政権となるがゆえに保護貿易主義に傾かざるを得ない。
ポールソンは、それを一番懸念しているという(ヘラルド・トリビューン、12月3日付け)。
中国の対米輸出は激減の最中とはいえ、十月は352億ドルの黒字を記録した。とくに輸出後に中国は税関還付を輸出業者に措置しているため、産業構造そのものが輸出偏重といういびつな体制になっている。
そのうえ、米国の失業が今後、8-9%に増大すれば、人民元の20%切り上げ要求が議会からあがってくるのも当然だろう。
次期財務長官に指名されたティモシー・ガイトナーNY連銀総裁は、外交官として日本勤務歴もあり、いやそれよりも中国へ留学経験があり、ポールソンの片言とちがって中国語を流ちょうに操れる。そして財務次官歴任者だから、適任といえば適任である。
 
だが、オバマ次期政権は閣僚の主要人事だけは発表したものの、明確な対中政策「チェンジ」の具体的な代案をいまだに見いだせないままである。その間隙をつくかのように人民元は過去貳年間ではじめて下落傾向を示している。
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