2548 もう西側の金融機関へ投資しない 宮崎正弘

「もう西側金融機関への投資はしない」と楼継偉CIC会長が爆弾発言。米英銀行への投資は82%の株価陥没。資金は中国経済の内需へ向かう。
CICとは中国投資公司。外貨準備高から2000億ドル(20兆円)もの巨費をまわして、国富ファンドとして設立されてマスコミの話題をあつめ、世界の金融関係者が衝撃とともに見守ってきた。
サウジやクエート、シンガポールの国富ファンドと一挙に肩を並べたから、CICが次に何をするか、その一挙手一投足に世界の目があつまった。
最初にCICは米国のヘッジファンド「ブラックストーン」へ30億ドルを投資し、次いでモルガン・スタンレーへ50億ドル、英国のバークレー銀行にも。
 
九月、ウォール街の金融危機勃発で、ヘッジファンドの雄「ブラックストーン」は投資活動が頓挫、ちなみにCICが買った時点でのブラックストーンの株価は29ドル60セント。これが08年12月2日の終値で5ドル34セント。実に82%もの株価陥没。(ブラックストーンは元商務長官リチャード・リチャードソンらが開設したヘッジファンドの新興勢力で、ヒルトンホテルの買収などで名をはせた政治銘柄でもある)。
中国のネットの書き込みには「なんという無駄な投資だ」「責任をとれ」「欧米に騙されたのだ」などとすさまじい批判が集中し、当局はこうしてネット掲示板を禁止したほどだった。
 
12月3日に香港で開催された「クリントン・イニシャティブ会議」の最終日に北京から飛んできたCICの楼継偉会長が演説し「もう我々は西側の金融機関へ投資しない」と言明した。
外貨準備世界一、GDP世界4位、米国債保有世界一という「金持ち中国」への西側の期待は、これで吹き飛んだ。06年にイタリアを抜いてGDP世界六位、つぎにフランスとイギリスを抜き、いまやドイツに迫ろうとする中国の経済力も、ここではっきりと息切れである。
▲世界的危機に協調すると胡錦涛はサミットで口約束したが。。。。
世界金融危機、システムの破綻という危機を目前に中国は、その中枢のCICのトップが公式の場で、「今後は協力しない」と実際に発言したに等しく、これまで密かに欧米銀行の救済を要請されてきた、その期待感を暴風雨のように吹き飛ばした。
対照的に中国は国内景気刺激と内需拡大のため5800億ドル(57兆円)を投じると先に発表したが、これらは主に高速道路建設と鉄道網の拡充に投資される。
楼会長は「パールデルタからの対米輸出が突然の激減に見舞われたのは米国の不況もさることながら、米銀の信用状(LC)の枯渇にある」と批判した。
つまり米銀の資金不足で米国の輸入業者がLCを米銀から開設できない。資金不足、ドル不足からビジネスが成立せず、「珠江地域(パールデルタ)の輸出基地で工場閉鎖、倒産、失業が広がった」と米国への責任転嫁も忘れなかった。
楼継偉は清華大学卒業、財務部から国務院副秘書長を経てCIC会長に抜擢。背後に朱容基元首相の影あり、いまは中央委員候補でもある。CIC社長は高西慶(前全国社会保障基金理事長)。
蛇足だが、冒頭の「クリントン・イニシャティブ会議」とは、言わずと知れたヒラリー次期国務長官の夫=クリントン元大統領が主宰する財団で、産油国から中国を顧客に面妖な資金を集めて「慈善事業をしている」と公言している団体。NYタイムズさえ、この活動に批判的だった。
しかし香港での会議で、クリントンの資金募集活動は最後になると見られる。なぜならヒラリー国務長官就任の条件が、夫の資金活動の中止だったから。
いずれにしてもヒラリー指名公聴会(一月下旬)で上院共和党は、この面妖なる前大統領の資金ルートに関する質問を繰り出して指名に派手な嫌がらせを仕掛けるだろう。
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