2558 果たして麻生か、小沢かなのか? 古沢襄

主要マスコミの麻生内閣支持率調査が出揃った。いずれも麻生内閣の支持率が急落し、これまで党首力で民主党の小沢代表を圧倒していた「誰が首相にふさわしいか」の人気度調査でも小沢代表の逆転を許している。
共同調査では麻生内閣の支持率は25・5%、不支持率は61・3%にのぼった。朝日調査はさらに厳しく支持が22%、不支持は64%。福田内閣の末期と同様になり、発足2カ月余りですでに政権末期の様相だとしている。
<共同通信社が6、7両日に行った全国電話世論調査で、麻生内閣の支持率は25.5%と11月の前回調査から15.4ポイント急落した。不支持率は61.3%と前回から19.1ポイント急増。
麻生太郎首相(68)と民主党の小沢一郎代表(66)の「どちらが首相にふさわしいか」への回答は、小沢氏が34.5%(10.1ポイント増)で、麻生氏の33.5%(17.5ポイント減)を初めて逆転した。麻生首相の一層の求心力低下は避けられず、来春以降とみられる衆院解散・総選挙の時期について難しい判断を迫られるのは必至だ。
内閣不支持の理由は「経済政策に期待が持てない」28.3%、「首相が信頼できない」19.8%、「首相に指導力がない」18.7%の順で多かった。首相の政策のぶれ、一連の失言を厳しく評価したといえそうだ。(共同)>
<朝日新聞社が6、7の両日実施した全国世論調査(電話)によると、麻生内閣の支持率は22%で、前回調査(11月8、9日)の37%から急落した。麻生首相と民主党の小沢代表のどちらが首相にふさわしいかの質問でも、麻生氏を挙げる人は30%(前回49%)に大きく下がり、小沢氏の35%(同23%)が初めて上回った。「選挙の顔」としての首相の優位性は完全に失われ、発足2カ月余りですでに政権末期の様相だ。
内閣支持率は、福田内閣末期とほぼ同じ水準にまで一気に下がった。不支持率は64%(前回41%)。その理由では「政策の面」が63%に達する。自民支持層でも内閣を支持する人は54%(同72%)にとどまり、「麻生離れ」が進んだ。無党派層の支持も11%(同26%)に下がった。
麻生首相に「実行力がある」とする人は21%で、「そうは思わない」の68%が圧倒した。発足当初は「実行力がある」が54%、「そうは思わない」が28%だった。
定額給付金を含む追加の補正予算案の提出を来年1月の通常国会に先送りしたことについては、「納得できる」23%を「納得できない」60%が上回った。来年度予算編成の基本方針で、これまでの財政再建路線を転換して、景気対策のため支出を柔軟に増やすとしたことには、「評価する」48%、「評価しない」35%で、一定の支持を受けた。
麻生首相のこれまでの仕事ぶりの評価を聞くと、「期待外れだ」が最も多く44%、次に多いのは「もともと期待していない」の40%で、「期待通りだ」は12%、「期待以上だ」は1%だった。
首相にふさわしいのが麻生氏か小沢氏かの問いでは、過去5回の調査でいずれも麻生氏が小沢氏に倍以上の差をつけてリードしていた。背景には野党支持層の一部や無党派層からも支持を受けていたことがあったが、首相への失望感の広がりから、それらが急速に失われたようだ。
衆院の解散・総選挙の時期については、「早く実施すべきだ」が51%で「急ぐ必要はない」の40%を上回った。「早く実施」は10月下旬の調査では33%まで下がっていた。
「いま投票するとしたら」として聞いた衆院比例区の投票先は自民28%(同30%)、民主36%(同33%)など。無党派層で民主に投票するという人が31%(同23%)に増え、民主がリードを広げた。政党支持率は自民27%(同30%)、民主23%(同24%)など。(朝日)>
共同と朝日調査を見るかぎり国民は麻生内閣の退陣を求め、代わって小沢首相の登場による民主党内閣を望んでいるかにみえる。しかし読売調査では、国民は「政界再編による新しい枠組み」(33%)か「自民党と民主党による大連立」(25%)を望んでいるとしている。
読売調査では麻生氏と小沢氏のどちらも選ばなかった人が35%に上り、これまでの最高になった点に注目している。麻生首相に対する失望や不満が、ただちに小沢首相待望論に結びつくわけではない・・・という分析である。朝日調査でも「政党支持率は自民27%(同30%)、民主23%(同24%)」と付け足りの様に報じている。
公平にみて共同調査や朝日調査から国民は小沢首相を待望していると結論を求めるのは少し飛躍がある。安倍内閣の人気低落から福田内閣を待望し、福田内閣の人気低落から麻生内閣を待望してきた世論調査が、今度は麻生内閣の人気低落で小沢内閣を待望するというワンパターン分析の繰り返しになる。
国民は麻生か小沢かの選択ではなく、安定した政治勢力の実現にあるのではないか。そうでないと民主党の小沢内閣が誕生した途端に、退陣を求める世論調査を行うことになりかねない。それは日本政治の劣化現象を助長するだけで、政治は漂流し、国民の政治離れが進むことになる。
人気度だけで政権を倒してはまた作るという賽の河原の石積みを性懲りもなく重ねていると、強力な権力政治という魔物を呼び出すことになりかねない。昭和の五・一五事件の前夜のような社会情勢が徐々に生まれようとしている危機感を持つべきではないか。
<政権発足からわずか2か月余で“麻生人気”が大きく失墜したことを示す今回の読売新聞世論調査で、最も注目されるのは「衆院選後の政権」として6割近くの有権者が「政界再編による新しい枠組み」(33%)か「自民党と民主党による大連立」(25%)を望んでいることだ。
当初は期待を抱かせた麻生首相への失望は、有権者の「自民党離れ」を決定的にしただけではない。民主党も含めた今の政治全体への不満を拡大させたことを示している。
麻生首相が「ポスト福田」の自民党総裁に選ばれたのは、その国民的人気の高さが“選挙の顔”として期待されたからだ。
9月の総裁選告示直後の読売新聞社世論調査で、小沢民主党代表とどちらが首相にふさわしいかを聞いたところ、「麻生氏59%―小沢氏28%」と麻生氏が圧倒した。麻生内閣発足後の調査でも54%―26%(9月)、56%―23%(10月)、50%―22%(11月)とダブルスコアを続けてきた。ところが、今回は29%―36%と逆にリードを許し、「党首力対決」は小沢氏が制した。
ただ、今回の調査では、麻生氏と小沢氏のどちらも選ばなかった人が35%に上り、これまでの最高になった。麻生首相に対する失望や不満が、ただちに小沢首相待望論に結びつくわけではないことを示すものだ。
麻生人気急落の要因が、首相の度重なる失言や前言撤回、金融危機・景気対策のもたつきにあることは調査結果でも明確だ。とは言え、麻生内閣が臨時国会の会期を延長しながら、第2次補正予算案提出を年明けに先送りした背景に「衆参ねじれ」による国会運営行き詰まりへの懸念があることも否定できない。
次期衆院選をにらみ、2大政党が政策より政局を優先しているように映る今の政治そのものに、国民は厳しい視線を注いでいる。自民支持層のうちで「自民党中心の政権」を望んでいるのは34%、民主支持層でも「民主党中心の政権」を望んでいるのは50%に過ぎない。政治の大きな変化を求める声は高まっている。(読売)>
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