「人民元からの大脱走」が本格化している。中国またもや金利を劇的に下げて資金供給を増加させる一方で・・・。
中国がまたまた金利を下げた。12月22日、中国人民銀行は、基準金利を0・27%切り下げ、貸し出し金利は5・31%、預金金利2・25%とした。
下半期だけで五回目の利下げ、23日から実施される。過去一年間だけで20回近く、中国人民銀行は金利を調整したことになる。
一方、外貨準備高が九月末から減少に転じていたことが露呈した。初めての異常事態発生である。
九月末に公表された外貨準備は1兆9056億ドル。ところが十月末に、これが1兆8900億ドル内外に目減りしているとロイターが伝えた。同期の貿易黒字は352億ドル、それなのに166億ドル減った? ということは単純計算しても、500億ドル強が、中国から“脱走”したことにならないか?
異常な外貨準備のからくりはこうだ。輸出で外貨が貯まったのは事実である。対米黒字は多い年で2400億ドルに達していた。
だが、中国の外貨準備高は、その二倍から三倍のペースで増えていた。
第一に人民元安を維持するために当局が大量のドル買い介入をしてきたからだ。これは日本も2004年から三年間で、合計43兆円を注ぎ込んでドル買いを行ったように、為替レート維持が目的だった。
第二に、しかしながら米国議会の人民元切り上げ要求に応えるため06年7月に2・1%切り上げて、爾来、20%近く切り上げてきた。
▲相対的に日本円が強くなる可能性が高い
そうした金利、為替政策を続行すれば、理論的には外貨準備高が減少に向かうはずである。だが実態はそうならなかった。世界の投機筋、とくに米国の華僑ファンドが、さらなる人民元高を狙って、投機資金をどっと中国に投下し人民元預金に回したからだった。
人民元は香港ドルより強くなり、日本円は一人民元=13円から、17円に上昇したほどだった。人民元は米ドルにペッグしているからだ。
流れが変わった。
人民元高は終わったと世界の投機筋が判断し、おそらく一斉に中国からドル資金を引き揚げ始めたのだろう。
リーマン・ブラザーズの破綻以後、人民元は過去貳年間ではじめて弱含みに転移し、さらに切り上げではなく「切り下げ」が市場で噂されはじめていた。
今後、人民元暴落もあり得るだろう。外貨準備も、おそらく年末までに一兆ドル前後までに「激減」を繰り返す恐れがある。つまり、相対的に円はまたまた強くなるだろう。
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2609 人民元高は終わった 宮崎正弘

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