インド国境に移動を開始したパキスタン軍は、当初伝えられた一万人規模ではなく、少なくとも二万人規模に達していることが各種報道で明らかになった。実際には数万人規模という情報もある。
インド軍も手をこまねいている筈がない。ほぼ同規模の部隊移動をしているだろう。すでに小規模の衝突や戦闘が行われているともいわれている。軍事情報だから手の内を知られたくない双方ともメデイアには情報提供を制限している様子が窺われる。
イスラマバードからは朝日が「部族地域で後方支援などをしていた約2万人が26日に移動を始め、東部ラホールの周辺に再配置されるとみられる」。産経はバンコクから「パキスタンは、インドとの国境沿いに2万人の兵力を移動した。インド軍による急襲を念頭に置いた予防的配備とみられる。だが、パキスタン内で軍強硬派が主導権を強めれば、事態は一触即発の状態になる恐れもある。米国主導のアフガニスタン国境付近でのテロ掃討作戦が手薄になるとの懸念も、現実味を増している」。
また米国のAP通信によると、パキスタン軍の規模は約二万人としたが、CNNは「パキスタン軍の兵力増強の規模は不明だが、数万人との情報もある」と伝えている。
これに対してインド軍の動員状況は完全に情報統制が敷かれている様であまり伝わってこない。パキスタン軍の情報(高官筋)が豊富なのは、ムシャラフ前大統領の退陣によって政府よりも軍当局主導で動いている現れといえる。それも軍部内の強硬派がリードしている可能性が高い。
このまま双方が兵力を増強していけば、大規模な軍事衝突になりかねない。双方の調停役となるべき米国は、共和党から民主党に大統領の交代期にあるため動きがとまっていると言ってよい。危険な兆候である。
<イスラマバード(CNN) インド西部ムンバイで11月26日起きた同時多発テロでパキスタンとの関係が緊迫する中で、同国が対インド国境付近に兵力を増強、インドによる地上侵攻に備えていることが26日分かった。複数のパキスタン軍高官が明らかにした。
アフガニスタン国境の北西辺境州、政府直轄部族地域でアルカイダ系、タリバーンの武装勢力掃討に当たっていた部隊をインド国境へ回したという。兵力増強の規模は不明だが、数万人との情報もある。
北西辺境州などで任務に就いていない部隊を移動させており、同州での治安作戦の継続に影響はないとしている。
兵力増強を進めている対インド国境の地点は不明だが、インド国防省当局者は同国とパキスタンが領有権を争うカシミール地方の停戦ライン付近でパキスタン軍の動向に変化があると指摘した。
パキスタン軍高官はまた、インドとの衝突に備え、パキスタン軍士官らの休暇を制限、全兵士を隊へ復帰させたとも述べた。パキスタンのハッカーニ駐米大使は「パキスタンは戦争を求めてはいないが、東部で国境を接する当事国からの脅威に対処しなければならない」とインド国境付近での部隊増強を事実上認めた。
同時多発テロでは160人が死亡し、インド当局は実行犯の10人はパキスタン側のカシミール地方にあるテロ軍事基地で訓練を受けたと主張している。インドは、テロの首謀組織はパキスタンのイスラム過激派「ラシュカレトイバ」と断定し、同国に強い対応を要求している。パキスタンは、同組織の指導者を自宅軟禁に置くなど一応の締め付けは行ったが、インド側が求める関係者の身柄送還などは証拠不十分を理由に拒否している。
両国は事件発生後、軍用機の領空侵犯など挑発行為を応酬している。(CNN)>
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2632 パキスタン、インド双方が兵力を増強 古沢襄

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