2676 国際資本の大脱走 宮崎正弘

中国から国際資本の「大脱走」がはじまっている。バンカメも中国工商銀行の筆頭株主から大半の保有を売却。
既に小誌でも報じたように中国の外貨準備に異変が起きている。公式発表が遅効系列なので、2008年10月末の段階での数字しか分からないが、すでにこの時点で外貨準備が実質500億ドルのマイナスを記録した模様。
同時期の中国の米国債保有は6529億ドル。ちなみに日本は第二位となって5855億ドル。
しかも、オバマ次期大統領は「今後数年、財政は毎年1兆ドルの赤字が続くだろう」(1月7日記者会見)。つまり米国は日本と中国に米国債購入を促さざるを得ず、中国が逃げの姿勢なら、金利を短期的に上げざるを得なくなるだろう。
大手格付け機関のフィッチは、「2008年度の中国の外貨準備は4150億ドルの増加だったが、09年度は激減して1770億ドルになるだろう」(ヘラルドトリビューン、1月8日付け)と減少を予告している。
固定資産税の急増により2007年の中国の税収は、じつに32%もジャンプしたが、08年度の税収は前年比3%のマイナス。とすれば09年の税収はもっと悲惨になるだろう。
推定される数字。
中国の外貨準備は1兆9000億ドル(08年10月末時点)。その70%が米国債ほか、ファニーメー、フレディマックなどの債権と優良企業の株式など、米ドル建て。
つまり宮崎流の独断推定で中国の米ドル建て債権保有は1兆3300億ドル。
他方で中国は国内経済活性化のため道路鉄道建設など中国版ニューディールに57兆円を投じる。CIC(中国投資公司)はブラックストーン、モルガンスタンレイに合計80億ドル投資(そのご80%が損失)を最後に「海外物件に、新しい投資をしない」と言明。
▲アメリカの金融帝国の衰退を中国は待っているのかも?
単純に図式化すると、中国は日本と同様に米国債権を買い続けざるを得ない。
そうしなければ米ドルの為替レートが落下し、一ドル=80円、70円とすすむ。日本の輸出産業が死滅に近い打撃を受けるだろうが、中国の輸出産業は自らを殲滅させてしまう恐れがある。
にもかかわらず中国は「経済的理由」の合理性よりも、中華思想の政治判断が先に立つ。
対米投資を続行しない姿勢を鮮明にしたのだ。
他方、国際資本は中国からの脱出を始めた。
遅効系列の統計が出る頃には、もっと劇的な数字が並ぶだろうが、香港経由でカネが米国に環流している。
同時に米国債権もロンドン、フランクフルトなど欧州での取引がカウントされていないので、複雑な背景を把握できない。
実態はもっと激しい国際資本の脱走がおきていると見られる。
メリルリンチを吸収したばかりのバンク・オブ・アメリカ(BoA)は、これまで中国工商銀行の筆頭株主だった(19%)。が、これまでに6%にあたる保有株を市場で売却し、28億ドル強をNYに環流された(ロイター、香港発。1月7日)。
 
UBS、ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド、シティグループなどは中国銀行の大株主だが、これも保有株売却の圧力がかかっている。一方では欧米金融機関が自分の資金として環流させる目的があるが、他方では北京政府の圧力で、中国四大国有銀行から外国人の株式保有比率を減らず政治的思惑があると推定される。金融の大混乱、まだまだ続きそう。
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