韓国の李明博政権を目の敵にしている北朝鮮が、韓国政府の関係者の平壌訪問を受け入れた・・・各紙は短く伝えているだけだが、突然の変身ぶりの裏には何があるのだろうか?朝鮮半島情勢に関心がある者なら謎解きをしたくなる。
北朝鮮に入国するのは北京で行われている六カ国協議の黄浚局次席代表ら一行である。しかも随行者には核関連の技術者が多い。したがって単なる南北交流の糸口を探る代表団とも思えない。
北朝鮮は、ここにきて重要閣僚の交代人事を大幅に行っている。北朝鮮の党、軍、政府に動きがあると韓国の情報機関は分析している。北朝鮮は金正日総書記の健在ぶりをさかんにアピールしているが、本当に病状が回復したのであろうか?
様々な疑問に包まれている北朝鮮だが、頑なに李明博政権を敵視してきた雪解けには、何か重要な理由があった筈である。ブッシュ政権の退場によってヒル国務次官補の利用価値はなくなった。ヒラリー国務長官の出方は分からない。
米韓が一枚岩とみて、とりあえず黄浚局次席代表を呼び入れたという見方もできる。
韓国の朝鮮日報は①オバマ米新政権に対する柔軟姿勢のシグナル②核燃料棒を韓国に高値で買い取らせたい・・・二点が北朝鮮の狙いと分析した。
<北朝鮮が李明博(イ・ミョンバク)政権発足後初めて、韓国政府関係者の入国を認めた。北朝鮮に向かうのは外交通商部の黄浚局(ファン・ジュングク)北朝鮮核問題企画団長の一行で、15日から平壌を訪問する。今回の訪問は、南北関係と米朝関係にプラスに作用するとの見方が有力だ。北朝鮮は昨年3月27日に開城工業団地に常駐していた韓国側当局者11人全員を追放し、それ以来、韓国側当局者の入国を認めてこなかった。
◆韓米双方を意識したジェスチャーか
韓国政府の関係者はこの日、「黄団長は南北会談の代表ではなく、6カ国協議の韓国側次席代表という立場で平壌に向かう。今回北朝鮮を訪問する6人は全員が政府関係者や核関連の技術者だが、このメンバー構成には意味がある」と述べた。今回の訪朝団には、外交通商部や統一部の関係者だけでなく、韓国原子力研究院の核技術者や韓国水力原子力の関係者もメンバーに含まれている。
黄団長一行は6カ国協議で懸案となっている核の無能力化や検証問題以外に、現在行き詰まった状況にある南北関係についても北朝鮮側と意見を交換するかは明らかでない。しかし、東国大学のキム・ヨンヒョン教授は「北朝鮮がどのような形であれ韓国政府関係者の平壌訪問を認めたこと自体、評価すべきことだ」と語る。
また政府系シンクタンクのある研究員は、「米国のオバマ次期大統領の就任式(20日)を1週間後に控えた今、米国に対して核の無能力化を含む交渉に積極的に臨む準備ができているとのメッセージを送った」との見方を語った。
一方で統一研究院の全星勲(チョン・ソンフン)研究員は、「北朝鮮は核問題と南北関係を完全に分けている。未使用の燃料棒を高値で売るというビジネスの側面で、韓国政府関係者の北朝鮮入国を認めたのかもしれない」と述べた。ある政府関係者は「北朝鮮としては、現時点で中断状態にあるエネルギー支援を再開させるチャンスとも考えて、入国を許可したのだろう」とコメントした。
◆今回は北朝鮮による燃料棒ビジネス?
今回の北朝鮮訪問の目的は、北朝鮮がまだ使用していない核燃料棒を購入するかを決めるに当たっての事前調査だ。現在核施設無能力化に向けた11の措置のうち八つは完了し、現在残っているのは▲使用済み燃料棒の取り出し▲燃料棒駆動装置の除去▲未使用燃料棒の処理-という三つの作業だ。
使用済み核燃料棒は全部で8000本あり、そのうち5500本以上はすでに取り出しを終え、今も1日に15本ずつ取り出し作業が行われているという。燃料棒駆動装置は、使用済み燃料棒の取り出しが終了すれば簡単な作業で除去することができる。そのため未使用の核燃料棒をどう処理するかが事実上、最後の課題となっている。
未使用の核燃料棒廃棄は「曲げるか、売却する」という方式で行われる。政府の調査団は今回、寧辺の燃料棒保管施設などを直接訪問し、どのような対応が可能かを検討するという。現在、北朝鮮が保有する未使用の燃料棒は5メガワット用と50メガワット用を合わせて1万4000本はあるとされている。
政府は未使用の燃料棒を購入する問題を前向きに検討しており、6カ国協議の主席代表である金塾(キム・スク)韓半島(朝鮮半島)平和交渉本部長も昨年12月の6カ国協議期間中に、「(北朝鮮での)現地調査を経て、(燃料棒の)商業的価値がどれほどかについて実務的かつ専門的に確認する必要がある」と発言している。(朝鮮日報)>
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