2751 もうひとつのアメリカ 宮崎正弘

これまでに債務超過(インソルバンシー)、事実上の破綻に陥った米銀、英銀、欧銀。米銀の信用喪失は3兆6000億ドルという最悪の見積もりが登場。
邦貨換算で234兆円。これが欧米有力銀行の抱えた信用喪失額だと斯界の新しい“予言者”が語った。
ノウリエル・ルービニ(NY大学教授)は早くから金融危機の到来を予言していた。リーマン・ブラザーズの破綻以後、この教授の片言一句に全米ジャーナリズムの注目が集まる。
ルービニ教授は1月20日、ドバイへでかけてセミナーで講演した。「銀行危機がはじまった当初、1兆4000億ドル程度の被害と見積もられたが、政府が打つ政策の不手際、企業側の情報隠しなどにより事態は悪化した」。
バンク・オブ・アメリカは08年第四四半期に17億9000万ドルの赤字を申告し、政府から138億ドルの緊急融資を受けた(が、オバマ就任の日に30%も株価は下落した)。つまり誰の目にも、この銀行は経営破綻寸前ではないのか。
シティ・グループは82億9000万ドルの赤字を計上し、二つ会社に分社化を決定、ほかに不採算部門などを売却し、贅肉をおとす会社再編に着手した。日本では日興コーディアル証券などが売却される。
「これらは事実上の倒産であり、英国や欧州の金融機関はおしなべて同じ境遇にある」とルービニ教授は爆弾発言を続けた(IHI、1月21日付け)。
事実、RBC(ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド)は08年度通年で410億ドルの赤字が予測され、英国政府の救済が叫ばれている。
「一方、石油価格は09年にさらに10%前後下落して、1バーレル=30ドルから40ドルのあいだで推移するだろう。したがって産油国であるサウジ、ドバイ、オーマンなどは政府予算の激減に直面することになるだろう」(リービニ教授)。
 
世界大不況の損害額、予測される不良債権の総額が、いまだ明らかにされていない段階で、上述教授の見積もりは最悪の部類の数字だろうけれども。
◎いったい誰が伏魔殿のごとき対中援助を決めたのか。 六兆円も投じた日本の対中ODA援助に中国は感謝したことがあるのか。古森義久・青木直人『終わらない対中援助』(PHP)
対中円借款は打ち切りになった筈である。日本のマスコミ報道がそう言っていた。
ところがアジア開発銀行などへの巧妙な迂回融資で、日本の巨額が「援助」という名の下に、いまだに中国のインフレ整備に回され、それは間接的に中国の軍事力の増強に繋がり、つまり日本の「国益は失われ」、「いちばん税金の無駄遣い」を日本は繰り返していることになる。
嘗てスターリンが言った。「奴らは自分を吊すロープを敵に売っている」と。
それなのに日本政府、外務省は日本にミサイルの照準を当てている仮想敵に、なにゆえに援助を続けるのか?産経新聞で早くから、この腐臭を放つ稚拙外交の主柱=ODAの矛盾を指摘した古森氏と、アジア開銀の迂回融資の実態を鋭くえぐった青木氏が最新のデータをもちよって現場の実態を抉っている。
「血税が使われているのだから明細を公開して欲しい」と要求しても、資料を出し渋るのは日本の官僚、なぜなら厳しくカネの行き先をつきとめる規制がなされておらず、その法律的欠陥の多い監査の杜撰さを利用して巨額が、曖昧な海外案件に流れ込み、ましてや援助を受けた中国は「日本からの援助」を対外広報しない。
感謝の言葉は一切聞かれない。
古森義久氏が批判の口火を切る。「日本のODAは、その援助の実施を規定する国内の法律や法令はまったく存在しません。政府が毎年、公的資金一兆数千億円を投入する国家事業であるにもかかわらず(米国にもイタリアにも細かな規定があるのに)、それを施行するための明文化されたルールがない」。
しかも、中国を優遇するためなのか、外務省の反対で規制法は成文化されない。
青木直人氏は「中国へのODAが非常に優遇された」事実を述べたあと、こう補強する。「日本の対中援助は世界最長で最大規模の援助だった」。「アンタイドローンという援助も加えれば、実に六兆円にのぼる」。
最悪の問題は、この問題を頬被りしてうやむやな裡に中国への援助を三十年間にもわたって、われら国民の血税から出させてきた外務省と、ODA所管の官庁ならびに追求を怠った政治家。それを知っていたのに、一行も書かなかった大手マスコミという売国奴的な日本人の存在ではないのか。無駄なODA外交の伏魔殿の闇は深い。
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(読者の声1)前から燻っていたのですが、深刻な問題として浮上したのが、池袋のチャイナタウン化問題です。
在日中国人の多くが池袋に集中して住み、食材店、中国映画、DVD専門店、マッサージ、エステ、中国新聞は無料で配られ、中華レストランは百店舗を越える。
その彼らが池袋に本格的チャイナタウンをつくろうと言い出したので、地元商店街と軋轢、文化摩擦、収拾がつかない状態だと言います。長崎、神戸、横浜のチャイナタウンはともかく、新移民の日本への流入をさらに促進するような各地でのチャイナタウン化を阻む方法はないのでしょうか?(TK生、豊島区)
(宮崎正弘のコメント)「チャイナライズ(華化)」をもじって、「華禍」と定義したのは黄文雄氏でした。
黄禍でなくて、華禍です。池袋北口には中国食材や薬品、薬草、ヴィデオ店が集中しております。華禍の被害をまともに食らっている池袋の地元の日本人商店街は、以前から「ゴミの出し方がデタラメ」「くさい」「モラルが悪すぎる」と抗議をしてきた。
無料の華字紙を配ったり、放埒に中国語で怒鳴ったり、池袋北口周辺で中国人は我が物顔。豊島区の人口の実に4%が中国人という統計もあります。
その中国人らが、最近は地元商店街と「共生」などと言いだした。日本側は立腹を通り越して、一部には『中国人は出て行け』とチラシを蒔いている。
なにしろ地元に店を張りながら共同の外灯の電気代は支払わない。協調性がない(いやそれでこそ中国人なのですが)、この問題は文化の衝突でもあり、イタリアでポルトガルで、全世界でおきている『中華文明の侵略』との戦いでもあります。地元日本人商店街を支援する動きが必要でしょう。
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(読者の声3)貴誌2462号の指摘のごとく、オバマの就任演説には周りが期待しすぎですね。オバマにとって日本はしばらく(新政権が出来て新しい頭目が決まるまで)”圏外”でしょう。
それにしても宮崎さんの、オバマ就任直後の株価の大下落予想(1月17日、都内某所の講演)はズバリ当たりました。(有楽生)
(宮崎正弘のコメント)オバマの外交演説(就任前)のなかに英国との関係は鉄壁の同盟関係から、やや普通の同盟関係に移行する云々と示唆しています。
「従前の特別な英米関係から、新しい関係を模索している」(英紙テレグラフ紙)。となれば最初の外遊を日本にするか、どうかで次の外交戦略の変更が見て取れると思います。
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(読者の声4)オバマの演説は聴いたが、1)キング牧師、2)ケネデイ、3)ルーズベルト、、、20位以下でしょう。説教じみていて、つまらない。
黒人の平均教育は中卒。なんのことか言葉を理解しなかったでしょうね。拍手も、どよめきも、泣き声もなかった。アア~という金切り声ばかり。現代のアメリカ大衆の知性は堕ちている。テレビの所為です。
オバマは、アメリカ黒人の感情を利用した男です。「オバマは苦労をしていない」と、黒人で前国連大使のアンドルー・ヤング。オバマは、ハーバード大憲法学科(最低の学科とされる)を出ると、まず、シカゴ議会へ入る、そこで知り合った黒人団体から、黒人民主党上院議員のアラン・キーの汚職を聞く、ネガテイブ・キャンペーンを展開して、キーを倒して上院議員となる。
たったひとりの黒人上院議員だからという理由で、06年ケリーの民主党大会で、キーノート演説をやり脚光を浴びると、それを見たラーム・エマニュエル(ユダヤ系で、今、ホワイトハウス・チーフ。
この男から私ら夫婦にもメールが来る。06中間選挙で献金したが、大統領へのポテンシャルを模索した。
牧場に馬が不足の民主党はこれを利用した。つまり、オバマは民主党の「ダッコちゃん人形」です。
後はご存知の通り。オバマの人生にとって、今日がベストだったと想い出すでしょう。経済学者サマーズらも、ペロシ左翼議会のプレッシャーで操られる。クリントンの労働省長官だったロバート・ライシは、バークレー大の極左です。
日本バッシングのシナリオを書いた、ローラ・タイソン教授も同じリベラルの上に日本蔑視族。
これらが「青い黒人」オバマを操る。ちょうど「白い黒人」ライスが、ブッシュの言いなりになったようにですね。
オバマは経済など解らない人間。弁論を磨いて相手を倒してきただけの男。私自身の若いころに似ているから、よくわかるのです。
だから、あっという間にメッキは剥げる。さらにNYに10年、SFに20年も住んだ私ら夫婦は、素朴な南部の人々の話しを聞いているうち、いかにリベラルのバイアスのかかった東部と北カリホルニアに住んでいたかがわかったのです。
「リンカーンの奴隷解放はミシシッピー河の沃地、ニューオーリンズの港、フロリダが欲しかった”隠れ蓑”に過ぎない」のだと、正直で素朴なバプテイスト教会の牧師の話は筋が通るのです。
南部の中学校では「北部が侵略してきた」と教わるのです。
「黒人に対するKKKのテロはあった」とも語った。これは無知なだけだと。北部のヤンキーはそれを利用したと。ちょうどマイク・ホンダが従軍慰安婦の嘘話を耳にして「これはいい」と思いついたようにですね。
南部のカレッジの黒人学生に聞くと、北部の白人は口だけで、ずるく、冷たいとのことです。北部の黒人は悪いと。(伊勢 ルイジアナ)
(宮崎正弘のコメント)きわめてシンプルな語彙で、しかも力強くアメリカの現状をかたって頂きました。日本のマスコミも「もうひとつのアメリカ」を忘れている。いや、見ようともしないのでしょう。
或る有名な「アメリカ通」コメンティターが総括していました。「オバマにはカリスマ性が備わっている」って。
前号にも書いたように市場はオバマ不信でしょう。
332ドルの株下落で就任を歓迎したわけですから。日本にいるアメリカ人の友人の幾人かに訊きました。九割がずばり言いました。「オバマ政権は(カーターのように)四年で終わるのは間違いない」と。
ご存じのように在日アメリカ大使館もリベラルの巣窟、保守派はいません。外国人特派員協会にいるアメリカ人記者は、知日派ぶっていますが、率直に言って「利口だが、智恵がない」連中が多く、最近は会うのも億劫、インタビューを申し込まれても断固拒否しております。
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